「はっ・・・!はっ・・・」
トラックに追いかけられる少女。
少女といっても顔立ちは少しだけ大人びている。
トラックについては、軍用トラック、というイメージを描いていただければ間違いないだろう。
巧みにトラックの追跡をかわす。
町外れなので人はほぼ居ない。少女にとっては非常に不都合である。

この世界は・・・我々の住む『3次元』とはまったく別の、しかしどことなく似た世界。
機械が発達し、人とロボットが共同生活を営む世界。
人はここをガンマディメンションと呼ぶ。

 


Stage1:Silinder Town -はじまりの町-


ふぅ、と壁にもたれかかり一息つく。
少女の名は『ユウナ』。歳の程は10台中盤といった所か。

長い後ろ髪を桃色のリボンで結んでいるが、もっとも人の目をひきつけるのは
前後の白髪だろう。ただ、この世界ではこのような髪色は決して珍しいものではない。

(なんであたしがこんなめにぃ・・・)
不安に押され、首から提げた大きなペンダントを眺める。亡くなった祖父の形見だ。

数日前、謎のロボットがいきなり命を狙ってきたのだ。

「はぁっ・・・はぁ・・・ふぅ・・・」
物陰に隠れて難を逃れる。
なぜ、自分がこうなるのか。どう考えても解らない。
ふと、首にぶら下げたペンダントを眺める。
金のレリーフに緑色の宝石が埋め込まれている。

ガシュゥン

ロボット特有の足音がする。
左右から。ゆっくり近づいてくる。
ちらっ、と見るとやはり先程のロボットだ。
ちなみに、彼らの型を『γ0(がんまぜろ)』と呼ぶ。


ドクンーーーー!
心臓が脈打つ。
γ0が近づいてくる。

あと5秒。4秒。3秒。2秒。・・・1秒・・・!

 

 


(−−−−−−−−−メノマエノカベニトビコメ!−−−−−−−−−−)
どこからか、声が聞こえた。
目の前にはたしかに壁。しかし、壁である、飛び込めるはずもない。
ガシュン・・・ガシュン・・・
迷っている暇なんてない!と半ば吹っ切れ、思いっきり壁に飛び込んだ!!

痛・・・くない。目の前が真っ暗だ。一瞬気絶かと思ったが身体が傾いていくのが解る。
そう解った瞬間、というかわかる前にユウナの身体にはものすごい風が!
地面を、いや斜面を滑っている―――


ドッシン!!


そう思ったのもつかの間、現在は地面にたたきつけられてしまった。
普段なら痛がっているところだが、この場の雰囲気に圧倒され、そんなことも忘れていた。
・・・そこには、まるで巨大な基地のような、いや研究施設といったほうが正しいのか。
はたまた機械の鍾乳洞とでも言うような空間が広がっていた。

真正面にはカプセルのような大きな機械。
その前面には簡単な祭壇があった。


「まったく・・・やっとお出でになりましたか。」

暗がりの中から誰かの声。

「玖瀧博士の孫娘・・・優菜さん?」
それは丁度箱を重ねたような感じの中型ロボット。名は『ダンボックス』である。



彼は続ける。
「・・・さて。そこに眠っている彼の・・・赤鬼の鍵はどこです?」

「な・・・何よソレ・・・!?そんなのあたし知らな・・・」
何を言っているのか、さっぱり解らない。

・・・ゴッ!!


右目があけられない。
顔が痛い。アタマも。口の中にはかすかに鉄の味が広がっていく。
一瞬何が起こったのかわからなかった。しかし、かすかに聞こえるダンボックスの声で少し理解する。
「あいにく私はフェミニストではないのでね。雌に加減はしないんですよ。」
次の瞬間、身体が持ち上がる。髪が引っ張られる感じ・・・
「さて・・・それではいただきますよ・・・。」
ブチッ!
首元から聞こえた音。”ペンダント”がちぎられたらしい。
「ふむ・・・おそらくこの中ですねぇ・・・」

「仕方ない。壊すか。」
強烈な、狂気の視線を感じる。
ピキッ・・・祖父との思い出が頭をよぎる。
決して多くはない。しかし、かけがえのない思い出がアタマを駆け巡る。

「・・・や・・・め・・・ッ・・・ふ・・・ぎぁッ!」
「お前・・・バカ・・・だろ?我々にかなうとでも思ってるのか?」
伸ばした手に重いものが叩き付けられる。
「まったく・・・調子に乗るなよ・・・?クズが。」
「・・・っ!ーーーーーーーーー!!」
声にならない叫びを上げる。
手の上にのしかかった『足』は手をすりつぶそうとでもしているかのようだ。
「キサマごときのあがき・・・目障りだ。」
度重なる激痛に、意識は朦朧としている。
「・・・だが感謝しろよ・・・?記念すべき最初の犠牲者にしてやる。封印を解かれた赤鬼のな・・・」
ダンボックスの手が開く。バラバラ・・・砕けた欠片と共に金属音が。
「う・・・あ・・・」自然に、無意識に。眼からぽとぽとと涙がこぼれる。
ダンボックスは祭壇のような物・・・『赤鬼』が封印されたカプセルに近づいていく。
手前ほどの”鍵穴”に”カギ”を差し込んだ。
「さあ、目覚めなさい!赤鬼・・・いや究極兵器・・・銃魔王一号機・・・トリンガー!」 

パシュウ・・・・・・・・・・・・


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!
カプセルから飛び出したのは大量の弾丸。
カプセルが崩れ落ちる。そして中から何かが歩み出てくる。

 


ユウナはそのただならぬ気配を感じ取る。(コイツに殺されちゃうんだ・・・あたし・・・)そう、心の中でつぶやいた。
「・・・すばらしい・・・!さあ!生贄はそろっている!あなたの力をためさせ・・・」
「・・・の前に・・・テメーらに・・・オレの嫌いなもん・・・三つ教えてやろーか。」
狂気に満ちたダンボックスの言葉を、あっさり一蹴したトリンガー。
「何を言い始めるのだ・・・!?」
仁王立ちに腕組みで、トリンガーは語り始める。
「一つ目。弱い相手に大勢でかかるような卑怯者・・・」
「二つ目。えらそーにふんぞり返ってる奴・・・」
ユウナは「何か」を感じる。どこか聞き覚えのある声。
「そして・・・三つ目。」


「女を平気で殴れる男・・・!!」
・・・思い出した。先程。この部屋に入るための隠し通路を教えてくれたあの声だ。
「不安」はいつの間にか消えていた。代わりに何か暖かいもの・・・昔、どこかで感じたような、安心感・・・
「全部当てはまってんじゃねーか。そーいや、オレの力を見せろとか言ってやがったな・・・」
そして、ダンボックスらをにらみつける。
「・・・手前の身で解らせてやるぜ。ふんぞりかえってるだけじゃーないんなら・・・掛かって来いよ!!」

「良いだろう!」ダンボックスの肩ハッチが開き、ミサイルが放出される。
全てはトリンガーに向かって飛ぶ。・・・が。
「少々痛い目にあってもらいましょう・・・」
爆風は予想以上に早く起こった。そして爆音の中聞こえるのは銃声・・・!
霧が晴れた瞬間、ダンボックスに鉄の雨が降り注ぐ!!

 


「お前・・・バカだろ。」
「・・・バカ・・・ナ・・・!!」
「持ってるとも限らない女に強引に聞き出そうとするわ『ターゲット』をいきなりぶっ壊そうとするわ・・・
 でもやっぱ一番は・・・オレ様に叶うとでも思っちまったことだぜ!・・・さっさと・・・消えやがれッ!!」
そして、額に弾丸が”叩き込まれる”。
ひときわ大きな爆発。そして誘爆が起こる。
(・・・ダメ・・・ダ・・・!・・・ツヨス・・・ギ・・・・・・ル・・・・・・・・・・・・・・・・)
そして・・・ダンボックスは大爆発を起こした・・・

・・・薄れ行く意識の中、ユウナは赤鬼を見ていた。
そして彼女が目覚めたのは・・・三日後の病院、ベッドの上・・・。

「・・・!ここはっ!?」
がばっ!と布団を蹴り飛ばし、起き上がる。
・・・まるで今までの体験は夢のようだ。だが身体の傷が夢でないことを証明している。
赤鬼・・・いや、トリンガーは・・・見回してもいない。
「・・・どっか・・・いっちゃったのかな・・・」

ふと、窓の外を見る。いかにも、という感じのチンピラ風の男が通行人に肩をぶつけた瞬間を見てしまった。
普通なら眼をそらすが・・・それどこではない。
ぶつけっれた方は・・・真っ赤なボディーに一本の角。それはもちろん・・・

 

「オレにケンカうるたぁ・・・俺の嫌いなもん3つ・・・身体で教えてやらぁッ!」

 

ユウナは、自然といきなり、目の前が真っ白になり・・・気絶した。

 

 

つづきますか?

 

NextStage...

灼熱の砂漠を駆け抜けるトリンガーの前に現れた次の刺客は・・・エビ?
そして現れる謎の機械銃士の正体は・・・!?

Stage2:Sand Ocean-砂漠の遭遇-