が言うには自分が連れてきた・・・
もとい抱えてきたのは弱った捨て犬だった。
しかし今目の前にいるこれはどう見ても犬ではない。

のだが、はこの状況を説明する手段に心当たりがある。
というか、その実例が目の前で狼狽している。

おそらくこの子は、その捨て犬が同様に人化したのではなかろうか。
側頭部の物体は垂れた犬耳で、よくよく見ると髪に隠れて尻尾もある。

なるほど、合点がいったぞ!
正体不明の不安を払しょくした事による安心感。スッキリだ。

・・・・・・

「いや、そういう問題じゃないだろ!」

突然声を発したにびくっとする二人・・・というか2匹。
特に犬っ子のほうはとっさに後ずさるレベルだ。

どうするんだよこの子。
このビジュアルじゃ「元いた場所に返してこい」とは言えないぞ。

「・・・と、とりあえず、拭いてやらないと。」

玄関に用意したバスタオルを差し出す。

???「うぅっ・・・!」


とっさにの後ろに隠れる少女。
明らかにを警戒している。
これは人間を怖がっているというべきか。

「しょうがない、。たのめるか?」

「ほーら、大丈夫ですよー」


のときよりだいぶおとなしい。
多少は「顔見知り」だからなのか。

「こんなに震えて・・・寒いんですね。」


緊張や恐怖によるものかと思っていたが、もしかして寒さか?
それとも全部だろうか?

「あの、だんな様。
    お風呂に入れてあげてもいいですよね?


「あ、おう。」


一瞬「お風呂にいれてあげてください」かと思ったは、心の中で胸をなでおろしたのだった。



に引きずられ・・・つれられて風呂場へ入っていく犬っ子を見送る。

シャワーの水音とともに聞こえる声から察するに
大したトラブルはない・・・らしい。

「・・・任せて大丈夫そうだな」





「あ、ああ、大丈夫ですよ!怖くありませんよ!」

ドライヤーの「ボアーーッ!」という音に混じってドタバタと物音がする。
任せて大丈夫なのか?

は鍋の火を止め、お風呂場のほうをのぞいて見・・・
いや、いろいろマズいだろそれ。
そう思いなおして、にすべてを任せることにしたのだった・・・




「お。おお・・・」


雨が上がったころ。
風呂から上がり、髪をとかされた犬っ子を見て
は思わず、声を上げ・・・もとい漏らしてしまった。


さっきまで雨にぬれた髪でよく見えなかったが
サラサラとした黒髪に、幼い印象ながら整った目鼻立ち。
そしてもとが犬だからなのか、頭についた犬耳と同じく茶褐色の肌。


訪ねてきたを初めて見たときのような感覚が、を包む。
さっきまでの「女の子?」からほど遠く
困り眉も様になる美少女がそこにいた。



(・・・これは素材がいいのか、それとものセンスか・・・)


「あー、とりあえずホラ、これ。
   口が犬でも人間でも食べれるだろ。」


コト。と犬っ子の前に皿を出し、鍋から上げたパウチ袋をあける。
一応、万が一のために買いだめしておいたパウチの白がゆがこんなところで役に立つとは。

さっきの「コト」にすら反応した犬っ子だが
皿のにおいをおそるおそる嗅ぐと、どうやら食べ物だとわかったらしい。
舌を出しておかゆをなめ始めた。

「あ、おいおい・・・レンゲを・・・」

と言いかけて、目の前にいるのがさっきまで犬だったことを思い出す。

そういえば、は教えずとも箸の持ち方をわかっていた。
人間の観察をしていた・・・とは言っているが、そういうものなのだろうか?

そのは、犬食いをする犬っ子を困りながらもやさしく見守っている。
それは保護した迷い犬への慈愛なのか、それとも・・・

ドロン

聞き覚えのある「ドロン」と見覚えのある煙が。
煙が晴れると、座布団の上に茶色い毛の子犬が眠っている。

「あ・・・”戻っちゃいました”ね。疲れたんでしょうか・・・。」


そういうものなのか。
同じ境遇のいなりが言うならそういうものなんだろうけども・・・



???「おお、これはまた随分と。
    珍しいこともあるものだな。」


突然聞こえた聞き覚えのない女の声。
窓を見返すとそこには
新たな来訪者が腰を下ろしていたのだった・・・




第3話:おわり




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