昨日とは違う、ひんやりとした重苦しい雰囲気の曇り空。

散歩日和とはいいがたいが、彼女は天気による町の変化を観察しながら散歩を楽しんでいた。

歩道の隅、昨日の段ボールを見つけて中を覗き込む。

「こんにちは、ご機嫌はいかがですか?」
テレビで見た挨拶をまねてみるも、相手からの返事はなかった。






「ひろってください・・・?」


主語の抜けたこの文章を疑問に思いつつ、しゃがんで箱を覗いてみると
中にある物・・・正確には「いる」者と目があった。

「まあ・・・!」


中に入っているのは、かつての自分と似た特徴を持つ動物。
だが狐ではない。狐よりも丸い顔立ちで、耳もたれている。
以前読んだ図鑑に書かれていた。名前は確か・・・イヌだ。

うす汚れているがもともと茶色だと思われる毛皮を着たそれは
粗末な箱の中でうずくまり、怯えた目つきでこちらを眺めている。

同じイヌ科の生き物だからか、それとも個人の性質なのか
その犬が弱り、助けを求めていることを感じとる。

「だんな様に・・・相談してみないと」



「昨日だんな様に相談してみたんですけど、ちゃんと責任とれるのか、って。
   でも私、あなたのこと放っておけません・・・」


箱の中のイヌは昨日と同じくおびえたような目を向けている。
心なしか昨日よりもぐったりしている。
昨日は箱の中にあったドッグフードももう残っていないようだ。

ポツ、ポツ・・

帽子ですぐには気づかなかったが、背中に落ちた粒で天気の変化に気付く。
いままでかろうじてこらえていただろう空がついに限界を迎え
抑えられていた雨粒が一斉に降り注いでくる。

「きゃっ、急いで帰らないと・・・」

ビニール傘を開くため手元に目線を落とすと、足元のイヌに目が行く。

「・・・あ、こ、この子は・・・?」


・・・が、こういう時どうすればよいのか、彼女は知らなかった
人の姿になったことで得た理性が、の思考を促す。


こんな時、あの人ならどうするだろうか。


その姿を見たイヌがあげた悲し気な声が耳に入ったとき
の思考に野生動物の本能が拍車をかける。




誰かに助けを求めることを学んだ彼女は、頼るべき人を頼ろうと決めた。
はその犬を抱えると、その人が待つ家へと駆けだしていったのだった。
かつてその人が、自分にしてくれたように。










曇り空が雨を連れてくるのと同時に
が連れてきた謎の・・・謎の・・・なんだ?
雨に濡れた長い黒髪が顔を覆い、ボロボロの服から水滴がポタポタと落ちている。

「え・・・えっと・・・」


まるでホラー映画の幽霊のような容貌の小柄な・・・おそらく少女が
に手をつかまれて家に飛び込んできた。

???「ぅぅ・・・・・・きゅぅ・・・・・・ん」


彼女?が小さな鳴き声のような音を発しながらこちらを見る。
あまりの光景に目をそらしそうになったが、先に目をそらしたのは彼女だった。

髪に隠れてよく見えないが、眉は下がり、オレンジ色の瞳は見るからに悲しげだ。

・・・ん。
顔をそらした時に気づいたが、側頭部に何かついてるような。
ヘアピンやリボンではない、何か厚みのあるものが。

それを見たがハッ、とした表情をして声をかける。

「も、もしかして・・・あなた・・・ですか?」




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