「さ、ご飯ができましたよ」

・・・と、割烹着のがちゃぶ台に食器を並べる。


が我が家に居候を初めてはや三日。
最初は狐との共同生活という非日常に戸惑っていたのだが
意外なほどに不備なく事が進んでいるのは、逆に異常事態なんじゃなかろうか。


どうやら動物というのは、意外に人間のことをよく観察しているらしく
特にの住処は人里の近くだったこともあって
彼女は驚くほど人間の生活に順応していた。

ただ、並んだ料理は見た感じ主役は缶詰とインスタント。
一人暮らしの男の食事みたいな食卓だ。

今までのの一人暮らしと、あんまり変わってないような・・・
いや、狐に何を期待しているんだは。


「むむぅ・・・」
油揚げの入ったカップうどんに入った目を光らせる

狐の主食を調べようとした矢先、人の姿になったついでに
人間と同じものを食べられるようになったらしい。

「何度見ても不思議ですね、この”かっぷめん”というのは」

そっちかよ。
狐だからと言って別に特別油揚げが好きというわけではないらしい。
そもそも、その油揚げが好きというイメージも人間が作り出した偏見なわけだし。

「その、変な言い方なんだけどさ。
    昼間はいい子にしてるか?」


「いい子・・・というのはわかりませんけども
    言いつけを守っておうちの中におりましたよ。」


「・・・あ、ああ。そう。」

動物と人間とは時間の感覚が違う、というが
さすがに家の中に閉じ込めておくのは可哀想だ。

しかし、かといって狐の姿で首輪をつけて散歩をするのも違うし・・・
だいいち、今のこの顔を見た後にはいろいろ意識してしまう。


・・・と妙な悩みとともに視線を落とす。
その先にあるの茶碗に目をやると、フチにひびがあるのを見つける。
そういえば、使わなくなった古い茶碗を間に合わせで使っているのだった。

最初は気味悪さがあったが、三日も暮らせば情もわくもので
こんな食器で間に合わせたままでは不憫に思える。


「買いに行くか。食器。」

「・・・えっ」

「お前も自分用の食器があったほうがいいだろ?
    今使ってるそれ、のお古だし」


そうそう、確かもともとはが使っていたのだが
古くなったの買い換えて、予備にとっておいたのが今のの茶碗だった。


「服はある程度、自分で出せるんだよな?」

「はい、ある程度は。」

そう、が今、どこからともなく取り出した割烹着を着ているのも
実は自分自身の力で「出した」ものなのだ。
狐から巫女姿になれるのと同じ要領で服装も変えられるらしい。

ただ、初めて人の姿を成したときの服装が巫女服だったせいか
この服装が一番落ち着くらしい。
見る側としては落ち着かない服装なのだが・・・


「そうすると問題はその耳としっぽだな。
    さすがにそのまま外を出歩くわけには」

ぽんっ

「いかな・・・い・・・」

言ってる最中に消えたよ。

「これで!連れて行っていただけるのでしょうかっ?」

いかにもワクワクしています、という顔を向ける。
頭頂部の耳のない彼女は一見して・・・というか、
よく目を凝らしてもただの美少女だ。
はねた横髪はそのままなのだが・・・


ともかく、外出の準備は整った。
たちはさっそく、近所の小さなショッピングモールに足を運・・・

「だんな様、片付けが先ですよ。」

そういえば、の生活で変わったことがあった。
この、基本的にしっかり者の同居人のことだ・・・





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