番外編:サンタも驚くクリスマス

ここは、風乱斗の村、そう、白凰が旅立った村、だ。
相変わらず、弦奈は、家を直しているし、畑には農業にいそしむ人がいる。
そして白凰の住んでいた家。そこに白凰の姿はない。しかし、玄関口に立つ男がいた。
名は電光(デンコウ)。過去の戦いで活躍した武者であり、今はこの村で生活をする、そして、
彼こそが、白凰の父親だ。
「んー、今ごろ白凰はどうしてるんだか・・・・ま、俺の息子だ、しっかりやってるだろ!!」
そうこうつぶやくうち、雪が降ってきた。

やがて、もう一人、女性がやってくる、名は桃貴(トウキ)、一応上流階級の出身らしい、
白凰の母親だ。
「あら、雪・・・・ねぇ、あなた、むかーしだけど、覚えてる・・・?」
「ん?もしかして、あの『さんた』騒ぎの事か?」
それは、ある雪の降る日のことだった・・・・

--------------------------------六年前-------------------------------------

「白凰ー!!大変だ大変だ!!」誰かが騒ぎながら、白凰の家にとんできた、小さな鉄器武者の少年・・・・そう、紅牙だ。
「なっなに何!?紅牙!!」小さかった白凰も慌てて聞こうとする。
「いっ!今!とうさん・・・本・・・・!!!」大慌てで舌が回らず、もう何を言ってるのかわからない、
彼は、とても鉄器武者とは思えなかった。
「落ち着いて!!・・・・・それで、何?」白凰は彼を落ち着かせるが、実は自分もそわそわしていた。
「今ね!父さんの書籍のとこで本を読んでたら!コレ!」紅牙は持ってきた本を白凰に見せた。
それにはこう書いてあった。

”西の方にある国では12月24日のクリスマスに、「さんたくろーす」という老人がトナカイの引くそりで子供達にプレゼントを配る、という行事がある”

「凄い行事もあるもんだねー、」白凰は目を輝かせて言った。
「それでね!もうそろそろらしいんだ!その・・・・えっと・・・くすります!」
「紅牙・・・・くりすます、じゃ無くて?」この頃から白凰は突っ込み役だったらしい。
「う・・・・・うん・・・・くりすます・・・でも、くすりますのほうが響きが・・・・・・」紅牙は言いかけた。

さて、その日の午後、彼らは友達たちと、広場で雪合戦をしていた。
ちなみに紅牙は「さびるから」と、観戦に回っていたが、かなり白熱していた。
「そうりゃァッ!!」後ろの子の全力投球!しかし、大きく反れて横にいた白凰の顔に直撃!
「あべっ!・・・・・・」そのままぶっ倒れた。
「わー!!白凰!!ちょ・・ゴメーン!」投げた子供が白凰に駆け寄る、
「だ・・・だいじょうぶ!?」彼は白凰を起こそうとする、その瞬間!
「そりゃああぁぁ!!」「ぷんッ!!」白凰はその子に握っていた雪をほうった、見事顔に命中!!
その彼らを、横から見ていたのは女の子達、その中には当然、美利もいる。
「あっちも凄いわねー・・・・・・」しかし!「あぶッ!!!」それてきた雪玉が見事命中!
「おーい、ごめ・・・・・!!!」
「やったわねぇぇ・・・・!!!!」鬼のような形相で、雪合戦の方へダッシュ!!!
「そりゃああああ!!」もう大暴れだ。

そんなこんなで、もう、クリスマスイブの前日である。

その日の朝、白凰は家で飼っている小鳥、「翼丸(ツバマル)」に餌をやっているところだった。
今日も紅牙が飛んでくる。
「白凰!!またあったよ!本!」彼は片手にその手に余るほどの大きな本を持っていた。
「本当!?」
今度は、サンタクロースの乗るソリについてだ。
「・・・へぇー・・・トナカイねぇ・・・・」
「大丈夫なのかなぁ?おちないよね?」
そんな会話が繰り広げられる。
「・・・ねぇ、明日の夜さ」紅牙が言った。
「ん?」 「サンタクロース、天宮にも来るか、探してみようか?」
「・・・いいね!それ!!」

てなわけで、ついに24日!クリスマスイブだ!!

「うーん、やっぱりこのあたりかなぁ?」
ここは、風乱斗の村のある山の傾斜面、林には一面雪で真っ白だ。
サンタクロースが来るならどの辺りか、それを探しているようだ。
「あっちのほうにも行ってみようよ!」紅牙が言う。
少し日が落ちだしてきたが、彼らは気付かず、下のほうへ降りていった・・・・

さて、こちらは電光の家、弦奈が招かれ、なにやら話している、
「玄さん、そういうことでお願いしますよ、」
「ああ、任せてくれ、子供たちの夢は守ってやらんとな。」弦奈はなんと、赤い服に赤い帽子、・・・・ひげは・・・自前のようだ。
「あ、あのー・・・」桃貴がおっとり目に言った、「当の白凰たちはどこに行ったんでしょうねぇ・・・・」
「え、」「みてないぞい」ふたりは青くなった、外を振り返る、夕暮れも過ぎ、暗くなってきた。
「や・・・・・やばい!!」「たっ大変じゃァ!!」
二人は外に飛び出した!

「そういえばさ、白凰」紅牙は言った。
「ん?何」白凰は相槌を打った。
「今日さ、父さんが赤い服着てたんだ、あれ、もしかして・・・・サンタクロースの服かも」
「も、もしかして弦奈さんがさんたくろーすなのかもね・・・」半信半疑白凰は冗談を言った。
「そうか・・・・ボクらが寝てる間、父さんは毎年・・・」
「いやあの紅牙、冗談・・・」少し白凰は意外そうに言った。
紅牙は結構天然ボケだった、そんな事が判明したが、そんな事よりも、と白凰は外へ出てみた、彼らはほら穴のなかにいたのだ。
「・・・・・・・・こーが・・・・」脱力気味に白凰は言った、
「なに?」と、紅牙は外を見る、星が輝いていて、美しいが、うれしい気分にはなれなかった。
「や・・・・・やばい・・・かも・・・」
家に帰る道しるべは無いのだ!

「おーい!!白凰ー!」電光は雪を掻き分け進んでいく、その視界に、赤いものが移った、
「ん!?まさか紅牙か!?」電光は駆け寄る、・・・・よく見ると、サンタ服を来た弦奈だった・・・
しかも、雪のところに横たわり、ノビている
「っておい!!弦さん!どうしたんだ!」
「・・・・うう・・・こ・・・」弦奈がつぶやく「こ!?」

「こけた・・・・・」
「・・・・・・・」
「なんじゃそりゃっ!!どうしたかと思えば!ほら、肩につかまって!」
電光は雪の降る中、また進んでいった。

「うう・・・ここはどこぉ・・・・」涙混じりに白凰が言った。
「うう、地図機能がまだ不完全なの忘れてたぁ」頭についたガラス球から光を発し、ライト代わりにしながら紅牙が嘆いた。
光は強かったが、雪の降る夜、視界は雪にさえぎられてしまう。
「ん?あっちに何か・・・」紅牙は駆けた、しかし!
ズザァ!
「うわぁっ!がっ!」
何が起こったのは白凰にはさっぱりわからなかった、目の前の紅牙が一瞬にして消えたのだ、
紅牙にはよく解かった、自分が崖から落ちた事が。

「うう・・・」崖のすぐ下に生えた枝にひっかかり、一応、無事、しかしすぐに落ちてしまう、
白凰は紅牙の方に行ってみた、そして、その光景を目の当たりにする、手をすぐに差し伸べる、
紅牙の手が触れた、しかし・・・・

バキィッ!
ズザアアアアアァァァ!!

紅牙を支えていた枝が折れた---------------
「紅牙!!」
ズリィッ!
白凰のいたところの雪は崩れ、白凰も落ちた---------!!
「うわあああああぁぁぁぁ!!!」

「ッ!!・・・・今の声は!!」
今の悲鳴、それは電光の耳に届いた、彼の勘はすぐにその状況を察知した、
息子と、その友が-------
「白凰ッ!!」
雪を降る中を駆けた、その息子の声に向かって--------

幸い、白凰たちは高く積もった雪に助けられた、しかし、紅牙の瞳の日からは急速に
光が失われていった・・・・
白凰のほうも、手足がかじかみ、痛みさえある、もう、望みは無いのか・・・・
白凰は微かに思った・・・サンタクロースへの願いを・・・・

・・・・・・・サンタクロースさん・・・・・もしいるのなら・・・・たすけて・・・・・プレゼントもいらない・・・・
・・・・・だけ・・・ど紅牙を・・・・僕たちを・・・・・・

白凰の意識は消えた・・・・・

それから少したった、白凰が気を失っている・・・・そこへ、「誰か」が現れた・・・

「う・・・ううん・・・・・」
白凰は鈴の音の中、目を覚ました、毛布が駆けられている、暖かい・・・・
周りを見渡す、すぐそばで、紅牙が眠っている・・・・
ここは天国・・・?そう思った、しかし、ふと、自分の下を見た。
「・・・・え・・・・ええええっ!そっ!空ぁ!?」
そこは地面ではなく、木・・・そう、ソリの上だ、前を見る、そこには走るトナカイ!
後ろを見る!
そこに座るのは、赤い服、白い髭、彼が知る、武者世界に生きる者とは違う、長い手足・・・・・
初めて見るはずだが、どこかであったような、そんな感覚・・・

電光はふと、空を見上げる、鈴の音がしたからだ、
「・・・・・世の中、不思議な事もあるもんだ・・・・・あの頃・・・・・俺は不思議な事を見てきた・・・
まだまだ見終わってなかったんだなァ・・・・・・・・・・」
そうつぶやき、家に戻る道を歩んだ。

そして・・・・白凰たちが次に目覚めたのは、その次の日の昼。
「・・・・っ!お母さん!紅牙は!?」
桃貴は玄関を指した。
「・・・白凰・・・ごめんね・・・危ない目にあわせちゃって・・・・」
「気にしてないよ!!おかげで・・・・会えたんだから・・・!」
「うん!・・・・ところで・・・・何か・・・言われた気がするんだ・・・」
「僕も・・・・確かあれは・・・・」

「君達に、これから何があっても・・・君達の友情は崩れない・・・一生涯の友となるんだよ・・・・」

そしてその一年後、紅牙はさらわれ、七年後、彼らは意外なところで再会することになる。
しかし、この「言葉」は、守られることとなるのだった・・・・・・
それは、また別のお話・・・・・・・

番外編:おわり