前回のお話・・・
挫不都の国を目指して旅をする白凰と烈紅龍の前に突然現れたのは
ペンダントを持った謎の行き倒れ、何とラクロアの騎士!?
そこに現れた挫不都の忍者、雷影丸との戦いの最中、騎士、ゼフィランサスに
ペンダントの結晶が宿る!!
いざ!火燕丸、参る!!

第九話 驚き乱舞の騎士武者

「ゆくぞっ!」
「くっ!」
「・・・・・・・・・・」
気まずい沈黙が流れる。
「な、どうしたんだ!?」
その沈黙に耐えかねた烈紅龍が言った。
(何をする気だ・・・?)と、雷影丸は深読み。
「あ、その・・・」
申し訳無さそうに火燕丸が言う。

武器が無いんだが・・・」

「・・・・・・・・・」
さらに気まずい沈黙
「って!隙だらけでござるゥ!!」
その空気を打ち破り、雷影丸が突っ込む。
「っく!何か無いのか!?」
「ぜ・・・火燕丸さん!武器出して!」
白凰は叫ぶ。
「な・・・だからどうやって!!」
「アンタにもこういう武器があるはずだ!!」
烈紅龍が超轟禁と龍甲を指した。
「ああもう!なんか剣でろぉッ!!」
「させるかぁ!!」
雷影丸はカギ爪を振りかざす!

「あ、なんか来た!」
火燕丸の手に炎がまとわりつき始める。
そして、手に何か持ったような確かな感触が宿る。
「せぇい!!」
とりあえず、その武器でカギ爪を防ぐ!
「ぬおっ!?武器が出たでござるか!?」
「うおりゃぁ!!」
弾いた勢いで、雷影丸の胴を切る!!

ドコッ!!

「へ?」
「あいったぁー!!」
「な、なんだこれは・・・?」
剣だと思って、火燕丸が降ったもの、それは

「ヤリィィィィィ!?」

からくりのような装飾の施された槍が出てきた。

「な、槍が出てきたぜ!?」
烈紅龍は驚きながら言う。
「う、うん・・・」
困った白凰は口ごもる。

「どうすればいいんだ!?」
「そこだぁ!!」
雷影丸はなおも攻撃を仕掛ける!
「わわわっ!!」
慌てて火燕丸は槍を突き出す!
「どわッ!?」
不意をつかれた雷影丸は、とっさに右によける!
「ハッ!まさか!」
ブン!と、槍を降る火燕丸
「がっ・・・!!」

槍の刃の部分にあたり、雷影丸の吹き返し(兜の横に着いているヤツ)が砕けた。
「ぐっ!・・・や、やるでござるな・・・」
「ふん、やっとわかったぞ・・・」
バッと、槍を振り上げる!

「だぁ!」
槍を振り回し、雷影丸に攻撃を仕掛ける!
「おわっ!急に!動きが!よく!なったで!ござる!!」よけながら雷影丸。
「これで!」火燕丸が槍を突き出す!
「な!?急に悪くなったでござるな!」
「どうだぁッ!?」力をこめ、槍を引く!
「くそっ!変わり身!!」
火燕丸が切ったのは丸太だった!!

「なっ!?どこだ!?」
「ここでござるゥッ!!」真上から声!
「何!?」
そこから落ちてきたのは、雷影丸の人だかり!!

「お前だ!!」槍で一人を突く、しかしそれは煙になって消える。
「ははは!どれが本物か解かるまい!!」
「くそっ!!」
火燕丸は手当たり次第攻撃するが、どれも偽者だ。
「どうしたでござる!?」
一人が、火燕丸に攻撃をしかける!!
「ぐっ!」槍でとっさに防ぐ!そこには、一筋の傷が!
「次はこうだっ!」雷影丸がまた攻撃、再び防ぐ、傷が交差した。
「・・・・!これだ!!」
火燕丸は、『何か』に気がついた!
「さぁさぁ!もっと来て見ろ!全て防いでやる!!」
「ならば!!やってみろ!!」
いっそう激しくなる攻撃!!

火燕丸は、次々に角度を変え、攻撃を防いでいった。
そして、その時!
「かかったな!!」
その傷は、イビツだが、魔法陣を描いていた!!
「何をする気でござるか!?」
「こうするのさ!!」
火燕丸は、陣に念をこめ、呪文を唱える!
「火の精霊サラマンダーよ!我に力を貸し与えたまえ!!
  いくぞ!!」

「炎術!!バーニングランサァァァァァァ!!!!」

槍が火を灯し、雷影丸の分身をいっせいに焼き払う!!
「ぐああああああああああああ!!!!」

シュウウウウウウ・・・・・

「・・・!?本物はどこだ!?」
「ま、まさか、やきころしちゃっ・・・」
白凰がつぶやく
「ここでござるよ!」木の陰から、雷影丸が顔を出した。
続けて言う。
「白凰頑駄無どの!仕方ない、約束だ!紅牙殿はまだ元気でござるよ!
・・・仕方ないが、今回は撤退するでござる!次に会う時、お主の最期と思え!」
そう言った後、ドロン!と音をたて、煙とともに、消えてしまった。

「・・・白凰・・・」
烈紅龍が白凰を気遣うように、話し掛けた。
「・・・紅牙・・・無事なんだね・・・」
白凰は、涙混じりに言った。

「・・・ところで、ゼフィランサスさん、一体これからどうするの?」
しばらくたった頃、火燕丸に白凰が聞いた。
「・・・私のことは、火燕丸と呼んでくれ。・・・これから・・・か・・・」
火燕丸は、考え込み、うつむいた。
「・・・ラクロアに戻りたいのは山々だ、しかし・・・」
手を強く握る。
「ここは異世界、行く当ても無い・・・」
「あの・・・」
白凰が切り出す。
「それだったら・・・僕らと一緒に来ませんか・・・?」
「え・・・」

「僕たち、天宮の隣国を目指してるんです」
「・・・隣国・・・?」
「挫不都の国・・・もしかしたら、そこに行けば、ラクロアに帰る方法が見つかるかもしれない・・・」
「・・・・・・!」
「当ては無いけど・・・よかったら・・・」
「・・・・・・・・」
火燕丸は、しばらく考えた後、フ・・・と笑った。
「・・・それもいいな・・・確か、君達の言う武士道では、『過ぎた事を考えていても仕方ない』
というらしいな・・・私もそれに従おう・・・よろしく・・・」
「じゃ!俺たちと一緒に旅するのか!?」
烈紅龍の問いに、火燕丸は頷いて見せた。

「旅は道連れ・・・か・・・よろしく!火燕丸さん!」
「おっと、堅苦しいのは無しだ・・・よろしく、白凰、烈紅龍。」
「おうよ!!」烈紅龍は威勢良く言った。
「よろしくね!火燕丸!」
白凰も元気よく言う。

「さて・・・次はどっちへ行けばいいんだっけ・・・?」
白凰が、地図を取り出す。
「・・・ここを・・・こうだから・・・え!」
「どうした?」
烈紅龍が聞いた。
「次、山を越えるみたい・・・於雄得山(オオエヤマ)・・・」
「於雄得山って、あの?」
「どんななんだ?於雄得山って・・・」
「結構有名な山だぜ。」
「そうか・・・よし、行こうか!!」

「そうだな!たしか、ここから東のあれだな!」
烈紅龍が山を指差す。
「・・・あの・・・あれ、亜名廃無(アナハイム)山なんだけど・・・」

第九話:終わり


次回予告!
於雄得山のふもとに到着した白凰たちの目の前に現れたのは、やっぱり橙盗丸!
通りがかりの女の子を襲うが、その子は何と・・・
謎の医者と、ともに戦う白凰たちの運命は!?

次回!第十話「脅威の医師とお姫様」
お楽しみに!