第八話:見参!風突備ナイト!
暗い部屋、そこで、「誰か」が唯一の光となるモニターに向かっていた。
「・・・・奴は刻一刻とこの国に迫っている・・・・何としても阻止するのだ・・・われら、裏月の名にかけて・・・」
モニターの向こうから声がする、「解かりました・・・奴の位置は補足してあります・・。」
ところ変わって、挫不都の国、そう、白凰が目指す国だ。
町の中心にそびえる天守閣、そこからはなれた砦に、紅い鉄器武者がいた。
「・・・・・・・・」無言で廊下を歩いていく鉄器武者、その後ろから、少年のような高い声がした。
「紅牙殿ー!お待ちくだされー!!」前を歩いている武者こそ、紅牙だ。
「・・・雷影丸(ライエイマル)か・・・どうしたんだ?」足を止めて、彼の方に振り向く。
「・・・実は・・お聞きしたい事がありまして・・・」雷影丸は少し口ごもった。
「あの、工場にいた子武者でござる、お知りあいでござるか?」彼が聞きたいのは白凰のことだった、紅牙は答える。
「・・・解からない・・・ボクの記憶装置(メモリー)には入力されていない・・・でも彼を斬ろうとした瞬間・・・体が動かなくなった。」紅牙は目をつぶりながら言った。
「・・・そうでござるか・・・」雷影丸は少し考えるようにした。
「それがどうかしたのか?」紅牙は無感情な感じに言った。
「・・・あっいや別に!それでは、拙者用事があるので、これにて失礼させていただくでござる!!」彼は、ズドン!!と煙とともに消えたのだった。
けむい中、紅牙は、また歩き出した。
変わってこちらは、白凰と烈紅龍、綺羅温泉を後にし、林道を急いでいた。
そこへ・・・・
「ッ!?」白凰が足を止める、「どうした?」烈紅龍は駆け寄る。
「・・・何か・・・頭の中に響くような・・・」白凰は説明した、「・・・な・・・なんだこの感じ・・・」烈紅龍にも解かったようだ。
-------------アラタナセンシガクル-------イセカイノトビラガヒラカレン-----------------
その声は、白刃の鎧を手に入れたとき、響いた声と同じだった・・・。
しばらくして、その感覚が消え、白凰は言った。
「・・・なんだったんだろう・・・」なんとなく、横を見る、すると!
ガサ・・・・ゴソ・・・林から物音がする。
「なんだ?風もねぇのに・・・なんかいるのか?」烈紅龍は少し近寄ってみた。
林の奥を覗く、すると・・・
「・・・人だ!人が倒れてる!!」烈紅龍が林に駆け寄る、白凰も続く。
そこには、人が倒れていた、しかし、何か白凰には違和感があった。
「おい!あんた!大丈夫か!?」倒れている人に話し掛ける、すると・・・・
「・・・うーん・・・腹減った・・・」白凰たちは盛大にずっこけた。
ちょうどすぐ側に、食べられる木の実があったのでそれをとり、彼に渡そうと、起こした。
「・・・・!」白凰は、彼のその容姿に驚いた、明らかに武者頑駄無とは違うのだ。
言うなれば、西洋風の鎧を身に纏い、赤いマントをつけていた。
「・・・ありがとう・・少年た・・・!」彼も、白凰たちを見て驚いた。
「・・・あ、こ、これ・・・・」白凰は木の実を差し出す。
「すまない!」彼は白凰から木の実を受け取ると、一気にかぶりつく、大きめの実だったが、一瞬にして消えてしまった。
「・・・ふー、助かった、ありがとう!」彼はお腹が一杯になって元気が戻ったのか、白凰たちに話し掛けた。
「所で、ここは一体、どの辺りか教えてくれないか?ラクロア城が見えないから、相当遠くのはずなのだが・・・・」
「らくろあじょう・・・?えっと、ここは・・・・その、綺羅温泉のすぐ近く・・・」白凰は答えた。
「・・・へ?聞いたことが無い・・・・まさか、ここはラクロアではないのか!?」彼は聞いてみた。
「・・・えっと、その・・・ここは、その・・・天宮なんですけど・・・。」
少しの間三人の間に沈黙がはしった。
「な・・・なんだって・・・?」バッ!と彼は立ち上がった。
「こんな事をしている場合ではない!姫が!」彼は走ろうとするが、ここが異郷の地ということを思い出し、立ち止まった。
「・・・くそっ!早くラクロア城に戻らねば!!」
「あ、あの、一体何があったんですか?」白凰は彼に聞いてみた。
「・・・そうだな、君達には恩がある、それに・・・自己紹介、まだだったな、私は火燕の騎士
(ひえんのないと)ゼフィランサス、こことは違う国、ラクロアの騎士だ。」
ゼフィランサスは語り始めた・・・・
「私は、仲間とともにラクロア中を旅してきたんだ、仲間の名は、拳闘士(けんとうし)サイサリス、そして、魔導士(まどうし)ステイメン・・・。
そして、ある日、生まれ故郷だったラクロアの地に帰ってきた日、城である事件が起こった、
仮面の男、覇道剣士(はどうけんし)ガーベラと言う奴が、城を襲撃したんだ、当然、私は
城に急いだ、モンスターたちとの戦いで、かなりの深手を負ってしまったが、何とか、奴の・・・
ガーベラの所までたどり着く事が出来た、しかし・・・
奴は卑怯にもラクロアの姫を人質にとったのだ・・・。
私は、何とか姫を救出する事に成功した、しかし、ガーベラの放った魔法に飲み込まれて・・・
あとは知ってのとおりだ、いつのまにかこの場所にいた。」
「・・・たいへんですね・・・」ゼフィランサスが語り終えると、白凰はもらした。
「ところでさ」烈紅龍がふいに横から言った。
「なんだ?」 「何でその「姫」の名前だけ出てこないんだ?」
ゼフィランサスは言った。
「あ、ああ、それか、実は、私が旅立ったときと、姫がかわっていたんだ、私が知る姫様は、今、女王となっていた、そのうちに、娘が姫となったようだが、私は・・・その頃旅していたんだ。」
「・・・・・・」以外と簡単な理由に、烈紅龍は急に無口になった。
「・・・・!ところで、この辺りにペンダントが落ちていなかったか!?」
ゼフィランサスは、急に言った。
「へ?」「どんなのですか?」烈紅龍たちは聞いた。
「青い水晶がついた、金のブローチだ!あれは・・・」ゼフィランサスが言いかけた、そのとき!
「「らくろあ」の勇者達に伝わる、絶大なる力を持った、ペンダント・・・でござろう?」
後ろの木の上から、声がした。
それは、高い、少年の声だった。
「っ!誰だ!!なぜそれを!」バッ!とゼフィランサスは後ろを振り向いた。
「・・・ふふふ・・・大当たりだったでござるな、お探しのものはこれかな!?」
そこには、黒い忍び装束の少年が、逆さ釣りでペンダントを握っていた。
「・・・・あっ、あのときの!!」白凰の脳裏には、紅牙を運び出す忍者の姿が写った。
「おっ、そこの武者殿は・・・確か紅牙殿の・・・」
「ぶっ無事なの!?」雷影丸が言っている途中で口を咲き、白凰が聞いた。
「さあねっ!教えんでござるよ!敵である拙者が情報を漏らすとでもっ!?
万が一でもこの拙者、雷影丸を倒せたら教えてやらんでもないでござるがねっ!」
「えっと・・・んじゃ、覚悟しやがれっ雷影丸ッ!」烈紅龍が威勢良く言った、
「うけてたつでござるっ!!」雷影丸は、自分のつかまっているロープの引っかかった
枝まで飛び上がり、取出したくないでロープを切った瞬間、枝を蹴る!
ビシュッ!
「・・・!!」烈紅龍には何が起こったか、理解するまでに数秒必要だった、
無理も無い、前にいた者が一瞬にして消え、代わりに自分の頬が血で染まっていたのだから。
「間一髪よけたか・・・今度は首を狙うでござるよ・・・?」後ろの枝から声。
烈紅龍はバッと振り返る。
「・・・ふん!おもしれえぜっ!」拳を上に振り上げ、叫ぶ!!
「王努桜輝招来!!」
烈紅龍は鎧に包まれた。
「小細工でござるか!だが、これならどうでござるかっ!」
シュバァッ!!ダンッ!!ダンッ!!
雷影丸はまるで猿のように枝を飛び回る。
「これならっ!どこからっ!くるか!解からんで!ござろうて!!」
一気に何回も襲い掛かる!!
しかし、烈紅龍は平然、その代わり鎧は傷だらけだ。
ニヤリとして言った。
「多少の攻撃くらいは防げるんだよッ!」
「お・・おい!な・・なんだあれはっ!」ゼフィランサスは目をまん丸にして烈紅龍をみた
「あ、あれは・・・その・・・僕らが持ってる鎧です!ふしぎな!」白凰は
自分もはっきりしないが、一応答えた。
「ほら、あの額のところ、結晶がついてるでしょ、あの力なんですけど・・・」
「結晶・・・か・・・」
こちらでは、烈紅龍たちが戦闘中だ。
雷影丸は枝の上から言った。
「おぬし大事なことを忘れてはござらんか?」
ダァンッ!!!!
枝を蹴り烈紅龍目掛け、突進!
(まずいっ!やられるっ!!)烈紅龍は、瞬間、そう悟った。
鎧を装着していても攻撃を食らう部分がある、それは、関節部分などの鎧と鎧の隙間、だ
喉元寸前にまでに刀が迫る!!
「もらっ・・・・!?」
ガキッ!!
烈紅龍を助けたのは鎧を纏った白凰の超轟禁だった!
「ぬぬぬ・・・っ一対二とは!」
「そんなこといったって・・・仲間が死にそうなの、見捨てられるもんか!!」
白凰はとっさに雷影丸に言い放った。
「ならば・・・本格的に行くしかないでござるなッ!」
雷影丸は叫ぶ!そう、もちろんあの呪文を!!
「王努桜輝招来ッ!!」
一瞬の光、しかしそこには雷影丸の姿は無い。
「・・・なっ!?どこへ消えやがった!!」辺りを見回しながら烈紅龍。
「・・・上だッ!!」白凰は叫ぶ、
「何!?え、じゃ横から着てる奴は!?」
白凰が横を、烈紅龍が上をそれぞれ向くと!
なんと!
雷影丸が二人におそいかかってきた!!
「なっ!?」「どうゆうこと!?」
「「とりあえず!!」」二人は身構えた!
しかし・・・
ドロン!!
「えっ・・・・」雷影丸は両方とも消えた。
「ここでござるよ!!」真下の地面から雷影丸の声!!
「のあっ!!」二人は弾き飛ばされる!!そして落下、
そこには雷影丸が二人、腕にカギ爪を構え、突っ込んできていた、そして!!
ザシュウッ!!
「ぐふっ!!」烈紅龍たちは尋常でないダメージ!そして、二人は倒れこむ。
「な・・・なんだ・・・今のは・・・?」
近くに黒い鎧を雷影丸が立つのが解かった。
「ふふふ・・・見たのは初めてでござったか・・・?」白凰にはぴんと来た。
「・・・!分身の術!!」
「おお、ご名答!」双答えた後、白凰たちはやっとの思いでたちあがった。
「まだそんな力が!!ならばこうだッ!!」雷影丸は、肩鎧の推進器(ブースター)で
木の枝の方に飛び上がった!!
「行くでござる!!陽炎忍術奥義!!乱れ球!!(カゲロウニンジュツオウギ ミダレダマ)!!」
双叫ぶが早いか否か、彼は木々の枝を蹴る、その瞬間分身し、あちこちから、白凰達にカギ爪の攻撃を仕掛ける!!
「うぐあああああぁっ!」猛烈な斬撃の中、白凰たちはよろいに守られるも、
何とかたつ事ができている状態だった。
それを呆然と眺めるゼフィランサスはっと我に返ったように拳を握り締めた!
(迷っている暇は無い!今はラクロアに帰る事なんて考えてる場合じゃない!!)
最後の一撃のように思える白凰たちへの攻撃に颯爽と立ち向かう!!
「うおおおおおおおおっ!!」盾を構える!しかし攻撃は防げず、彼を直撃!
「ぐああぁっ!!」彼の鎧は砕ける!!
「・・・邪魔が入ったでござるな」雷影丸は言うが、なおも攻撃の手は休まる事を知らない。
「ゼフィランサスさん!な・・なんで!!」息も絶え絶え白凰は言った。
ゼフィランサスは微かに答えた。
「・・・なんで・・・?私にもわからない・・・だがっ!」途中から語気はきゅうに強くなった!
傷だらけで彼は叫ぶ!!
「自分の恩人がやられるのを黙ってみていて何が騎士道だっ!!もう今はただ君達を助ける事以外何も考えていられやしないんだっ!!」雷影丸の方をにらみつける!!
その瞬間!
カアアアアアアアアアァァァァ!!
雷影丸の懐の中のペンダントが急にまばゆい光を発し始めた!!
「なっ!何でござるか!?」その瞬間、ペンダントにはめられた結晶がゼフィランサスの
額に飛ぶ!!
「うおおおおっ!!力が満ちてくるっ!この力はっ!そうか・・・やはりこれが!
風突備装備だったのかっ!!
いくぞおおおぉッ!!・・・おどろき・・!王努桜輝招来ッ!!
そのとき!!ゼフィランサスの体を光が包み、徐々にその光は、武者頑駄無の鎧に姿を変える!
「なああぁっ!きっ・・聞いてないでござる!想定の範囲外でござるッ!!」
「装着完了・・・!我が名は・・・えっと・・・この鎧には似合わんな!ならばっ!
騎士武者火燕丸!(ナイトムシャヒエンマル)見参!!
第8話:おわり
次回予告!!
風突備装備を装備したゼフィランサス!
ついに彼の大暴れが始まる!・・・と思いきや、その武器は槍!?
なれない槍での戦いに苦戦を強いられる火燕丸!
次回:王努桜輝乱舞の騎士武者!!
お楽しみに!
オマケ:勘の良い方はお気づきかもしれませんが、実はこの八話、最初は九話とあわせて一話でした・・・・
次回をお楽しみにってことで・・・