前回、坐不都城横に出現した謎の塔。
切り離された天宮天使の司令部が塔の麓へ飛んでいくのが見えた。
雲行きが怪しい・・・かなり雲が厚い。
「なんだあれは・・・!?おい!坐不都!」悪い予感に駆られて、双牙が叫ぶ。
「知らん!それに俺には戦狼という名が・・・」
戦場にこだまする笑い声に、戦狼の声がかき消された。
「グハハハハハハハハぁ!」
「この声・・・総隊長!?」
直後、空に巨大な幻が現れる。
「剣刃隊の諸君、今までご苦労だったなぁ・・・」
「・・・何だ・・・?何がおこってるんだ!?」と、各隊士達が戸惑いを見せる。
「すまないが・・・君達と・・・そして坐不都の諸君にはこれから消えてもらう。」
「まさか・・・ヤツは・・・!」
驚愕を隠せない剣刃隊をよそに、戦狼は苦虫を噛み潰した直後の顔。
(やはり・・・踏んだとおり・・・)
「そうだ・・・ワシは厳頭将・・・いや・・・裏月幹部・・・
魔道武人・・・幻動斎(げんどうさい)なり!!」
第十九話:鋼の鬼神が護りし門
「そんな・・・そ・・・総隊長が・・・」
「なんでござる・・・!?この展開は!」
空中と地上、雷影丸と剣刃隊の飛影刃(ひえいじん)、2人の敵同士の忍が戦いをとめる。
「そして・・・もう一つ・・・」幻動将の傍らに、縛り上げられた美利が映し出される。
「コイツの命を助けたければ・・・塔の最上階まで登ってくるがいい。わかるだろう?」
「天鷹さん・・・!」
白凰が叫ぶ。背中合わせに戦っている天鷹への声だ。
「・・・僕・・・あの塔へ行くよ!危険なのは解ってるけど・・・いかなきゃいけないんだ!」
「わかってんだよ!!」
天鷹の怒号をはじめて聞いた。
「どうせとめたって無駄なことはわかってる。お前はあの人の実の息子だ。
それに・・・お前ならあいつらを潰せることもな・・・」
「天鷹・・・さん・・・」
臣兵士を叩き斬り、叫ぶ。
「さっさと行け!それと・・・必ず美利も親友も助けて帰って来い!!」
「・・・うん!」
「待てよ!」
・・・声のほうを振り返る。
その声は・・・烈紅龍の声。
「俺たちを置いてく気か?いまさら水くせぇ!」
「仲間の友は自らの友・・・万国共通ではないのか?」
「あれがもし裏月の本拠地なら核鬼だっているはずだろ!」
「またとない好機(チャンス)なの!もしかしたら最初で最後の!」
「ひとりでなんか行かせないよ!ボクらだって・・・一緒に行くんだからね!」
「みんな・・・」
臣兵士を押し切り、塔へ駆ける一行。
近くで見るとかなり高い。
「白凰!お前は空から一気に最上階まで飛べ!
・・・心配すんな、すぐにたどり着く!」
「・・・わかった!!」
白凰は一気に上昇!5人は扉に飛び込んだ!
(信じてる・・・!言わなくても解る!)
扉に飛び込み、何十のも戸を突き破り、大広間に出た一行を待つのは・・・
「きゃああああ!」「莉穏!」
戸を開けた瞬間、黒い手のようなものが莉穏の身体を巻き取り、驚異的な速さで
戸の中へと引き込んだ。
「ようこそ・・・裏月の塔へ・・・」
「待っていたぞ諸君・・・実験の時は近い・・・」
「わらわも楽しみじゃったぞ・・・この時がなぁ・・・」
そこで待っていたのは蒼匠斎、核鬼、妙魏の裏月幹部たち。
莉穏が黒い影のような手につかまり、中央の扉に吸い込まれていった。
「核鬼ぃいいいいい!!」
「クックック・・・そう焦るな少年・・・被研体を返してもらっただけだぞ・・・?」
「どちらにせよ・・・簡単に通られては困ります。少し遊戯(ゲーム)をして貰いましょう。」
待て。と言いたげに蒼匠斎が手を前に突き出す。
「なに・・・簡単なゲームです。私達のそれぞれの最高傑作を倒してもらえれば、すぐに通して差し上げましょう。」
「左右の階段を進め。そこにわらわらの手塩にかけた傑作を待たせておる。」
「我輩は興味が無いのでね・・・地下の研究室で遊んであげよう。少年・・・」
突如、幹部達の姿が消える。幻像だったようだ。
「みんな・・・!」
怒りの涙をこらえ、押し殺した声の納徒に烈紅龍が言う。
「・・・行け!どっちみちお前じゃ足手まといだ!」
「烈・・・!」清水が講義しようとしたが、火燕丸が止めた。
「だけど約束だ!絶対恨みを晴らしてやれ!今までの憾み・・・怒り・・・全部だ!オレたちも行くぞ!」
「右は任せろ!」と火燕丸が胸を叩く。
かくして一行は、裏月の塔を昇り始める・・・!!
第19話:おわり
次回予告!!
激戦の火蓋は切って落とされた!
一筋縄ではいかぬ『傑作』との戦いに、勝機はあるのか!?
次回、第20話:鋼鉄の鬼械
お楽しみに