どんよりとした空!
打ち付けるような雨!
はっきりいって、土砂降りも土砂降りだ。
第十五話:王努桜輝っ!一筋の清き水!
で、主役の白凰たちはというと・・・
豪雨に足止めを食らって、とある茶屋で雨宿りをしていた。
その茶屋の近くには、少し淀んだ湖があった。
「あーもう!何でこんな雨なんだよ!!」
烈紅龍が不満気に言ったが、馬鹿らしくなって、黙ってしまった。
「それにしても・・・」
白凰が店内を見回す。
「何でここまで人いないんだろう・・・」
「確かに・・・少なすぎるな。」
火燕丸がつぶやく・・・と、後ろに気配を感じる。
「・・・な、何者だ!」
「ここの店主でございます・・・」
「あ・・・そうか。」
「お客さんが来なくなったのは・・・1週間前くらいですかな・・・」
いきなり、店主の老翁は語り始めた。
「1週間前くらいから、夜中に物音がしたり、ここいらで旅人が襲われたり・・・」
・・・莉穏と納徒は、静かに寝息を立てている。
「そこの湖に妖怪が出るという噂まで・・・」
「・・・妖怪・・・か。」
火燕丸の脳裏には、あの時納徒と莉穏を狙っていた、醜悪な妖怪の姿があった。
「・・・お、いらっしゃーい!」
店主が言う。客が一人、入ってきた。
しばらくして、店主がお茶を持ってきた。
「・・・ん・・・?あいつ・・・」
烈紅龍がそっちのほうを見つめている。
先ほどの客・・・金髪の子武者が背を丸めて落ち込んだようにお茶をすすっている。
「・・・いったいれっこーりゅーどこまでいっちゃったかなぁ・・・」
「あ〜・・・清水・・・?」
烈紅龍が呼ぶと、子武者は不思議そうに言った。
「・・・幻聴まで聞こえてるし・・・って烈紅龍!?」
ばっと振り返り、烈紅龍を見た。
「え、烈兄知り合い?」
「あ、どーも!弟がお世話になってるようで・・・」
「な!?俺のほうが兄貴だろ!?」
「いや、ボクの弟でしょ?烈紅龍。」
「あ、あの・・・展開がつかめないんだけど・・・」
白凰が申し訳無さそうに言った。
「ああ・・・こいつ、おれの双子のキョーダイの清水(しずみ)!」
「よろしくね!」
「え・・・」
「え・・・?」
「ふ・・・双子おおおおオオオオオオ!?」(似てねぇー!)
「ってか・・・こんなとこで何してたんだ!?」
「もちろん烈紅龍を探しに来たに決まってるじゃん!」
「え!?」
驚く周囲をよそに、話し始める。
「で、練郷街道を走ってったでしょ?ボクも追っかけてったんだけど・・・」
「だけど?」
「地図、西が下向いてるの気付かなくて・・・」
「で・・・迷ってた・・・ってか?」
(間違いない!双子だ!)
その会話に白凰は人知れず、納得した。
「で・・・?天津は見つかったのか!?」
烈紅龍が食いつくように言った。
「・・・ごめんね・・・まだ・・・なんだ・・・」
「・・・そうか・・・」
がっくりと肩を落とす烈紅龍。
・・・しばらくして、だいぶ雨が小降りになった。
「そろそろ・・・行くか。」
小ぶりな雨はほぼまだらになり、うっすら太陽が覗く。
「で、お前はどうすんだ?」烈紅龍が聞くと
「んー・・・そうだなぁ・・・一回うちに戻るよ。こっちの方だし、ね。」
「・・・そーか・・・どーする?みんな。」
と、話す双子の前の方で、皆は固まっていた。
「おい!どうしt・・・」
「か・・・かっぱ・・・?」
その顔を見て、思わず力が抜ける。
・・・丸い。丸すぎる。
あまりにもまん丸な胴体。
「待つッパ!オラ様はこの湖の主!!
河童或(かぱーる)様だッパ!!」
「え・・・「かぱる」じゃなくて?」
「・・・緑色だしな。」
「つーかコレが主かよ・・・」
「しかもどっかできいた台詞ー・・・」
誰が誰なのかはご想像に任せる。
「ってことは、お前か!この店に近づく客を減らすのは!」
火燕丸が勢い良くかっこよさげに叫んだ。
「いや、その店は前から繁盛してないッパ。」
「あ、そうなのか。」
火燕丸の背中に店長の視線が突き刺さる。
「とにかく!ここはオラ様の池!近づくなッパ!ついでに横通るのも禁止!わかったッパか!?」
「・・・どーする?白兄ー・・・とおれないぜー?」
「回り道しよっか?」
「どーしよ?」
「ぼくは飛んでこうかな・・・」
「いや、何で僕に言うの!?」
「そりゃ主役だし!!」
「・・・退治しちゃおっか?おれ達で。」
「んー・・・まあ、その方がみんなの為になるしね。」
「・・・んじゃ!いっけー!武器飛遊板ー!!」
水しぶきを上げながら武器飛遊板が河童或に突っ込んでいった!
「残念でしたッパー!」
ざぶん!河童或は湖の中に隠れた。
「うげ!どこ行きやがった!?」
「がんばれ納徒ー!」
「なんでみんな岸にいるんだよ!ずるいぞ!」
「いやだってみんな泳げないし・・・」
「よそ見するなッパー!」
「おわ!?」
真下からの攻撃で転覆寸前!
「ちょ・・・勝てるわけねーよー!!」
涙声になった。
「まちなさーい!」
「・・・へ?」
「清水!」
「小さい子供に手を上げるなんて・・・たとえ妖怪でも許さない!!」
「なんだッパー?今度はお前が相手ッパか?怪我するッパよー?」
「そうだよ!いくらなんでも生身でなんて・・・」
「白凰・・・だよね、ボクも普通の武者だと思う?」
「・・・え・・・じゃあ・・・まさか・・・」
「覚悟しなよ!かっぱさん!王努桜輝!招ー来ッ!」
水しぶきが清水を包み込むようだ。
渦巻きが蒼い鎧に変わる・・・
「いくよー!!」
たたたたた!っと、清水が水面を駆け抜ける!
「ッパ!?」
ごつんっ!
腰の刀の尻で頭を叩く。
「あいった!あいった!さ、さ、皿は叩くなッパ!!」
「残念だけど、ボクと水辺で戦うのは間違いだからね!」
「そりゃこっちの台詞だッパよ!」
また湖の中に隠れる。
「そー来るわけかー・・・でもね。」
両手をさっ、と左右に広げる。
「ちょっとだけ、避けててね・・・」
ざざざざざざざ・・・
「へ・・・うえ・・・うええええ!?何がどーなってッパァ!?」
「これがボクの風突飛装備の特性、「水流操作」!さーて、じゃ、覚悟して!」
「う・・・うぐぐぐ・・・こーなりゃ、コレ使うッパ!!」
河童或が底にあった岩を持ち上げる。
「もー、わかってないなー・・・だから!」
清水は刀を上に向ける。
「お!決まりだな!」
烈紅龍がのんきにも言った。
「行くよ・・・」
清水の刀の周りに、水がリボンのように巻きつく。
「必殺っ!」
一段、踏み込み・・・切り上げ!!
「渦巻吹飛(スピニングストライク)ッ!!」
「ぱがっ・・・!こここここここここここここここここここっこ」
「こんなのありッパかーーーーーーーーーーーー!!!!!????」(きらーん)
渦に巻き込まれ、吹っ飛ばされた河童或。
・・・なんか見覚えのある飛び方だ。
「ふあー・・・おわりっと!」
・・・白凰はあることに気づく。
清水の頭上には河童或の持ち上げた岩が落下している・・・!!
「清水危ねぇ!!!」
「へ?」
烈紅龍の叫びは遅かった。
・・・しかしっ!
「そりゃあっ!」
いつの間にか凰翼装になっていた白凰が、寸前で岩を一刀両断!!
「ついでにっ!」
と清水の手を握る。
「そーれっ!」
池の水が戻る、その前に清水を引っ張りあげた。
「・・・ったく、油断しすぎだぜ!」
「・・・だって・・・」
「白凰がたすけに入ってなきゃ、大怪我してたぞ!」
少し、うつむき、黙る。
白凰のほうに駆け寄った。
「・・・さっきは・・・ありがと。」
「・・・え?あ、うん」
「カッコよかった・・・」
少し頬を赤らめながら、清水が呟く。
「おいおい、まさか、お前惚れ・・・」
「ち、ちょっと・・・!」
そんなやり取りの中、白凰はザッ!と後ずさりし、
「ぼぼ、僕そういう趣味、無いから!」
顔を青くし、一気に口走る。
「あ〜・・・」
それを聞いて、一瞬きょとんとする清水。
「・・・やっぱり・・・勘違いしてた・・・?」
少しの間の後、口を開いた。
「ボク・・・こんな喋り方なんだけど、一応女なんだ・・・」
「・・・へ?」
時が止まる。
「お、おいおい、全員気付いて無かったってのか!?」
唯一事情を知る烈紅龍が言う。
「いったじゃねーか!おれの兄妹って!俺の妹だぞ!?」
「それを言うなら「姉」でしょ!?」
「って・・・お〜い・・・みんな・・・?」
「へへへ・・・おんなのこ・・・」
全員(莉穏除く)似たようなショックをうけ、かなりの時間、そのショックが収まる事はなかった・・・
ってなわけで、清水は女の子です!以後よろしく・・・
・・・ところで、白凰たちの少し後の道。
お姫様が追いかけていたのは言うまでもない事実だった。
次回予告!
とりあえず、進行方向ということで、烈紅龍と清水の家に立ち寄った一行。
妙に広い家の中で、ちょっと一休み・・・してる場合か?
次回、第十六話、
笑撃!実家に帰ります。
お楽しみに!
オマケノヒトリゴト
しずみんはおんなのこ〜