・・・何処かの少し暗い部屋、人が二人いることがわかる。
一人は男、一人は女・・・だ。

第十四話:驚威の挫不都の裏事情

「・・・何をしているのです、妙魏・・・?」男が言う、その声は・・・匠蒼斎、
「・・・わからぬかえ?」
妙魏(ミョウギ)と呼ばれたその女性が返した・・・化粧をしながら。
「それにしても、何故わらわがこんな場所で・・・」
「フ・・・あの方の計画を成功させるため、でしょう・・・」
「わらわとお主はどうやら気が会わんようじゃな・・・」
「そうですか・・・おっと、それでは、表の仕事がありますので、失礼。」
彼は、その部屋から立ち去ろうとした。
「・・・あの坊やの事かえ?機械いじりが出来るではないか」
「・・・あなたと違って、私は忙しいのです、三将ともなると、ね。」
そう言って、彼は部屋を出た。
「・・・ふん、愛想の無いやつめ・・・ここは良い男が少ない・・・あ、また厚いな・・・」

少しづつ明るくなっていく廊下を進む匠蒼斎。
ふと、そこへ・・・
「・・・匠蒼斎じゃないか・・・」
見るからに怪しい雰囲気の男が話し掛ける。
「・・・何か用ですか・・・?」
あまり関わりたくない様子。
「いや・・・良い・・・」
「用が無いのなら失礼。」
「ふん・・・」
男が匠蒼斎の胸座をつかんだ。
「・・・あまりいい気になるなよ・・・?ガラクタ作りの名人さん・・・?」
「・・・」
「我輩の研究とどちらが高等か・・・思い知らせてやるわ・・・」
「言いたい事はそれだけですか?・・・核鬼・・・」
手を払いのけながら匠蒼斎が言う。
「く・・・」
「実験体を逃がして、よく言っていられますね。」
そう残し、歩き去っていった。

さて、ここは挫不都の国の城下。
「・・・お!そこのお嬢さん!俺と一緒に・・・」と、言った瞬間鉄拳が飛んだ。
「何をやっている、砲炎。」
「ナンパ。」
悪びれる様子も無い砲炎に戦狼はすっかり呆れてしまった。
「・・・相変わらずでござるな・・・」
「どああああっ!!」
雷影丸がいきなり後ろから声をかけた。
ちなみに、忍び装束ではなく、普段着で。
「雷影丸!何やってんだよ!」
「何やってるって、買い出しでござるよ!」
見ると両手に野菜など入ったカゴが。
「・・・大変だな、お前も・・・」
「四本刀といっても、まだ子供でござるから・・・後は魚でござる!」
「そ、そういう事なの!」
「うおっ!?」
いつのまにか雷影丸と同じくらいの歳であろう少女がちょこんといた。
「あ、・・・」
雷影丸がたじっとした。
「雷影丸が心配になったのか・・・?」
砲炎が横槍を入れると
「ち、違うわよ、あんま遅いからって、頭領が見てこいって言ったの!」
そんな会話を羨ましそうに眺める砲炎が何を思うのかは、皆さんにお任せいたします。

「わ、わかったでござる!すぐ帰るでござるよ!」
「まだ買い出しがすんでないと言っただろう?」

「でぇっ!?」
「紅牙殿!」
紅牙がたっていた。
「・・・お前も買出しのようだな」
「匠(ショウ)殿が社会勉強のため、とな。」
「・・・大変だな、お前も・・・」
「砲炎、それ以外言う事無いのか?」
戦狼が珍しくつっこんだ。

「食い逃げー!!」
「!?」
すぐ近くの飯屋から男が唐突に飛び出してきた。
「へっへー!追いつけるもんなら追いついて・・・うお!?」
紅牙は即、拳に力をこめた。
「・・・突伸掌(とっしんしょう)・・・!」

ガシュッ!

拳部分が高速で伸び、男の手をつかんだ。
「・・・逃げるな・・・!」
「ひ、ひえ!化け物!!」
「・・・何?」
「は、離せ!!」
「貴様!!」
雷影丸が飛び出し、男に突っ込む。
「紅牙殿を侮辱したでござるな!?」
「やめておけ、別にボクは気にしていない。」

その後、役人の詰め所------
「ご苦労さん、坊や・・・お手柄だ、こいつは食い逃げ常習犯のようだな。」
四人は男を詰め所に突き出した。
「・・・おまえ、何もしてないじゃないか。」
「お前が言うな。」
「ん、ところで聞いたでござるか?」
雷影丸が切り出した。
「え、何がだ?」
きょとんとした顔で砲炎が答える。
「何がじゃないでござるよ!重役の集会の事、知らないでござるか!?」
「ええ!?聞いてねぇぞ!?」
慌てる砲炎。
「・・・匠殿が何か言っていたが、それだったか・・・」
「何時ごろだ・・・?」
「今何時・・・?」

「やばい!!!!!!」

四人は猛ダッシュし、挫不都城へ向かった。
「ちょ、雷影丸!買出しは・・・!?」
返事は無い。
「・・・まったくもー・・・」
彼女はしぶしぶ買い物篭を持ち去った。

「・・・四天犬士はまだ来ないんですか・・・?」
なぜか、匠蒼斎が城の中にいた。
「ま、まだ時間はある、気長に待とうさ!」
楽天的な感じの口調の返事が返ってきた。
「そうは言っても、彼が・・・」
「心配無用だ、匠蒼斎。」
無感情に答えが返ってくる。
「おいおい、清空よ、お前もたまには明るくしたらどうさね?」
「お前は能天気すぎるんだ、羅號(らごう)。」
ピシャリとと言い返す清空。
「へいへい。」
「そろそろ時間ですよ、二人とも。」

太鼓が鳴り、声が聞こえる。
「上様のおな〜り〜!!」
垂れ幕の後ろに人影が現れる。

「ここに集まってもらったのは他でもない、匠蒼斎。」
後ろから老人の声。

「例の情報を。」
匠蒼斎が言った。
「・・・了解しました。」
紅牙が答え、前に進み出る。

「・・・風突備装備はこの者達が所持しているようです。」

壁一杯に様々な顔が浮かび上がる。
その中には、白凰、烈紅龍、火燕丸の顔も。
「特に注意するのは、この少年かと。」
白凰の顔が大きく映し出される。
「しかし幸いな事に・・・」
横にいた匠蒼斎が言った。
「彼は今、この国に向かっています、おそらくここにたどり着くのは時間の問題・・・」
「皆も疑問に思ってるだろう事、言っといた方がいいのでは?」
会議中にもかかわらず、楽天的な口調で羅號が言った。
「そうか・・・」

「説明しようか。なぜ、いまこの国が風突備装備を必要としているのかを。」

「・・・風突備装備・・・どこでどう作られ、今にいたるか、全く不明じゃ、が・・・」
「・・・信じがたい事じゃが、この国を征服せんとする組織がある。」
「・・・組織・・・?」
「・・・裏月・・・、聞いた事があるじゃろう?
その裏月が、ある兵器を秘密裏に建造している、その様な情報があったのじゃ。」
「・・・秘密組織の極秘情報・・・か。」
清空がなんとも胡散臭そうな顔をした。
「よく手に入ったものだな。」
「機巧衆の情報力を甘く見ていただいては困りますね」
「・・・おまえの情報だったか・・・」
「つまり。そやつらを押さえるための武器・・・それが風突飛装備じゃ。」

「各人万全の準備を整えるように・・・以上じゃ。」


再び、ここは、先の暗い部屋。
匠蒼斎が入ってくる。
「・・・まだやっていたのですか。」と匠蒼斎が言うと、
「うるさい。」
何度も何度も化粧を落としたりつけたりして、足元が化粧の粉だらけになった妙魏は、答えた。

「掃除・・・しといてくださいね。」
そう残して、匠蒼斎は奥に消えた。


第十四話:おわり

次回予告!

白凰一行が次に立ち寄ったのは、『犀の河原』の近くの村!
どんよりとした天気の中、そこにいたのは烈紅龍の・・・!?

次回!「王努桜輝っ!!一筋の清き水」