丁度白凰が旅立ったころの天宮のどこかにある町・・・
そこにある家、大きさは中の下辺りというのだろうか・・・?
一人、誰かが飛び出し、家の中に言う。
「ごめん!ボクも行く!絶対烈紅龍と一緒に帰るから!待っててね!お父さん!」
そして、飛び出したそれは、少しスピードを落とし、町を出、旅立っていった・・・

驚け!おこちゃま武者!?

さて!白凰達の一行はと言うと・・・
「・・・また大きな町だね〜」
感嘆の声を上げ、その町の広さにただ驚くばかりだった。
『或手魅州(アルテミス)の町』・・・

少し町の中をうろついてみる。
人で賑わう大通り、光が届かず、少し薄暗い奥の道にも、何かありそうな予感。
そんな予感を胸に、白凰がふらっと横道に入る。

「おい、なんかあったか〜!?」
「あまり単独行動はするなよ〜!」

少し進んでみる、すると何処からとも無くすすり泣きが聞こえる。
「・・・ばか!泣くんじゃねえ!」
「・・・だってぇ・・・」
ふと覗く、そこには・・・
「・・・子供・・・?」

「・・・ぼく?どうしたの?」
声を掛けてみる。
「なっ!?な、な、なんだ!?ひとさらいか!?」
「・・・・・・・」
威勢のいい方は男の子、黒髪を短く縛っている。
「・・・た、多分違うと思うよ・・・?」
少しおびえながら、後ろにいた女の子の方が言った。
二人とも8〜9歳位だろうか

「あ、いやあの、泣き声が聞こえたから、何事かと思って・・・」
「・・・にいちゃん・・・」
「ん?」
「おれたちを・・・家までおくってくれないか・・・?」
「・・・家・・・?」
「赤流火天(アルビア)の町・・・」

「・・・ってなわけで。」
少したってから、白凰が烈紅龍と火燕丸に言う。
「この子達を送ることになったんだけど・・・」

「ま、よろしくな、あんちゃん、おれは納徒(ノート)ってんだ。」
男の子の方が自己紹介した。
「で、こっちが・・・」
「あ、あたしは莉穏(リオン)って言います。」
女の子がかわいらしく納徒に続く。

「・・・大丈夫なのか?そんなことしてて・・・」
烈紅龍が言う。
「だって!どうせ通るもん!赤流火天!」
「・・・え・・・」
「ほら!」
白凰が地図を開く。
「・・・お人よし・・・!」
「まあまあ、白凰のいいところだと思うぞ?それは。」
火燕丸がなだめるように言った。

赤流火天の町・・・
町、というにはあまりにも小さい、赤流火穏(天宮とは海を隔てた国)からの移民の町である。

さて、或手魅州を早くも立ち、旅路に着いた白凰たち。
丁度道端の川が太陽の光に照らされ、きらきらと輝いていた。

「・・・ん・・・?」
納徒が川の方を見る。
・・・何か・・・いた?
「で、さ、納徒くん」
白凰の声に耳を傾ける事にした。

「なにやってたの?あんなとこでさ。」
「・・・それは・・・強い武・・・ふぐっ!」
言いかけて、莉穏がとっさに口をふさぎにかかった!
「!?」
「誰にも教えちゃだめって言ってたでしょ!?」
「はぐ・・・!り・・・りお・・・」
「・・・ま、まあ、教えたくなかったら無理には聞かないよ・・・」
少し冷や汗をたらしながら、白凰が呟いた。

先程の納徒の感じた妙な視線、もう一人感じるものがいた。
「・・・何かに・・・見られている気がするな・・・」
ラクロアの騎士、火燕丸。
しかし、何に見られているか、何処からか、全く分からない。
仕方なく、無視する事にした。
「でね!でね!こーんなおっきいんだぜ!」
こちらがわでは、赤流火天の町にある建造物について盛り上がっている様子。
納徒が勢いよく、飛び出す、瞬間!

ザン!!

川から、何かが飛び出し、納徒に飛び掛った、間一髪で避ける納徒。
「か・・・河童!?」
「キキキキ・・・ミツケタ・・・ミンナ・・・コイ・・・」
片言の言葉で言った河童のような怪物に反応するかの如く、川からボコボコと泡が出始める。
そして、不気味な黒い影が飛び出した!!
「な・・・なんだこいつら・・・」
「・・・ウジュゥ・・・」
イカとエイを掛け合わせたようなシルエットの怪物とリーダーらしき河童・・・一番適切な表現だろう。
「敵・・・!?」
「こいつらだったか・・・あの妙な視線・・・!!」
「とりあえず・・・」
うちの三匹ほどが、駆け寄ってきた。
「敵意剥き出しみたいだぜ!!」
「隠れてて!二人とも!!」
納徒たちに指示を出す。

「王努桜輝招来!!」

「キ・・・ぶっとびあーむず・・・カ!?」
「よく知ってんじゃねーか!」
烈紅龍の拳が河童に当たる・・・が・・・」
「な・・・に・・・!?」
痛みは自分の手に跳ね返ってくる。
「キキ・・・カユイ・・・ゾ・・・」

「・・・かいしゅうブツ・・・はっけん」
「・・・ッ!」
物陰に隠れていた納徒たちを河童が睨む。

「危なっ・・・ぐっ・・・!」
「ショウガイ・・・ジョキョ・・・」
「あんちゃん!」
「はやく・・・にげ・・・」
脇腹をかすめただけですんだものの、やはり子供、その衝撃に堪えられず、足を取られる。

「おれたちのせいだ・・・巻き込んじまった・・・!」
「た・・・戦わなきゃ・・・駄目だよ・・・!」
「だめだ!ばれちまう!」

「あたしは・・・やだよ・・・!・・・こんなの・・・見てるだけなんて!」
意を決した莉穏がそう言って、駆け出そうとする・・・
「まて!莉穏!」
「納・・・徒・・・?」

「じゃまモノ・・・しょうきょ・・・」
「・・・くっ・・・!」
やられる!そう直感したとき・・・

・・・ザッ・・・

「・・・待てよ・・・お、おれ達が狙いなんだろ・・・!?」
「だ・・・駄目だよ・・・!」
「心配しないでよ・・・!あんちゃん!」
なおも進み出る納徒。

「かい・・・しゅう・・・!!」
手を振り上げ、攻撃の用意をする河童!
「その前に・・・1個だけ言うぜ・・・」
「・・・!?」

「残念・・・だったな!!造脳(ぞの)ちゃんよ!」
「ナニ・・・!?」
「や・・・やあああああああ!!」

ドッコーン!

「ガ・・・!?」
後ろから、何かが突っ込み、吹き飛ばされる河童・・・造脳!
それは、莉穏、しかし、何かに乗っている。

「こーなった以上・・・隠してらんねー!来い!!武器飛遊板(メカニスライダー)!!」
そう叫ぶと、どこかともなく、カラクリでできた飛行機のような物体が飛んできた!
そこに飛び乗る納徒!

「行くぜ!!人機一体(ジンキイッタイ)!!!!」
その言葉に合わせて、武器飛遊板は徐々に形を変える!
そして納徒がその内部に飛び込んだとき、その形は・・・!
「驚いた?あんちゃん・・・」

「機巧着装(カラクリチャクソウ)!納徒頑駄無ッ!!」

「あたしもねっ!機巧着装!莉穏頑駄無!・・・いっくよー!!」
鎧を纏った・・・(というか、乗った)莉穏が腕を振り上げる、すると!
「いっけー!扇扇子龍(ふぁんふぁんねる)!!」

ババババ!!

背中に背負った翼のような部品が飛び出し、開く!それはまるで、扇子・・・!
「うおっ!」
扇子から展開した、光の刃で烈紅龍に巻きついた触手が切断された!
「こいつぁーありがてぇ!お返しだぜぇ!!」
烈紅龍の復活、そして火燕丸も復活する!

「おい白凰!そろそろお前も反撃だ!」
「いくぜ!!龍魅影瑠(リュミエール!!)」
巨大なヤリ・・・のような武器を構えた納徒が参戦!
「ワレ・・・ノそうこう・・・ハむてき・・・!!」
「そーかな!?龍魅影瑠をなめんじゃねー!!」

ガギィ・・・!!

「ガ・・・ギ・・・ィ・・・!?」
「おれは斬ったんじゃねぇ・・・叩き割ったんだよ!」
してやったり、といったような顔で納徒が言い放つ。
「龍魅影瑠に使われてる材質は・・・普通だったら武器に使うもんじゃねえ、この硬さと重さだ・・・」
「ホカク・・・」
それならば、と言うかのように長い爪のついた腕を莉穏の方に伸ばす!

・・・キィン・・・

「だから、こーやって盾にするのさ!!」
莉穏を守ったのは、刃・・・!
「だいじょーぶか?」
「あ・・・う・・・うん」

「そらぁ!反撃開始だぁっ!!」
「いくよ!はっくんっ!!」

ダアン!!

凰翼装を纏った白凰の復活!
「みんなごめん・・・おまたせっ!」
「はっくん!あれ!ヒビ入ってる!」
一言二言交わした後、愚云の群れに突進!

「待ってくれ!刀じゃ斬れねぇッ!」

「だいじょーぶ!風突備装備を甘く見ないで!」

・・・ザザザンッ・・・!

「・・・斬影丸の刃は・・・全てを斬り裂くんだから!」
「・・・すげえ・・・!」
「かくほスルゥ・・・・!!」
「おおっと・・・!まだ残ってたみたいだな!」

「いくぜぇ!獅子流激弾(シシリュウゲキダン)!!」

ドガァン!!!!


納徒の手から発射された龍魅影瑠が造脳の体を・・・貫いて・・・いない!?
「あまイ・・・ゾ!」
「何だと!?」
造脳の体には刃先が刺さったのみ!!先程の傷も塞がっていた!
「どいててッ!!」
「え!?」

天を駆ける白凰の言葉、確信はないが、何か、勝利への道を掴んだようだった・・・!!
「あんたに賭けるぜ・・・!!」
「ありがと・・・いくぞぉッ!!」

前後逆に斬影丸を持った白凰が決死の急降下!!

「王努桜輝奥義改ッ!槌落貫通打(ツイラクカンツウダ)ッ!!!!」

バッコオオオオオォォォォォンッ!!

「ガ・・・グ・・・ほかく・・・しっぱ・・・い・・・」
龍魅影瑠が体を貫通した造脳は段段石のように・・・いや、石になり、砂となって・・・消えた・・・」

「撃ッ!!砕ッ砕!!」


「さて・・・説明してもらおうか・・・?」
火燕丸が少し思い口調で言った。
「・・・う・・・俺たち・・・は・・・」
「赤流火天の町の子武者・・・なんてウソついたってだめだよ・・・?」
「え・・・翼丸・・・どういうこと・・・!?」
「・・・ッ!」
「赤流火天の町に大きな建物なんてない・・・だって・・・見たから・・・」
・・・翼丸は白凰を探し回って飛び回っていたところ、蔵丸に襲われたのだ。
「・・・それに・・・あいつら、君達を狙ってた・・・」

少しに沈黙が流れる・・・納徒が口を開いた。
「・・・ははは・・・全部お見通しって訳かよ・・・」
少し、考えるようにして、続けた。
「おれと莉穏・・・何歳に見える・・・?」
「・・・?」
突然の奇妙な質問・・・

「・・・おれたち・・・まだ・・・生まれて・・・三年くらいしかたってねぇんだぜ・・・?」
「な・・・!?」
「嘘じゃねえ・・・おれ達は・・・ほんとだったらそこらで遊んでる子供だったんだ・・・だけど・・・」

「ある日・・・赤流火穏に極秘で忍び込んでた奴・・・核鬼(カッキ)頑駄無って奴に・・・捕まっちまった・・・
あの野郎は本当に最低な奴だったよ・・・俺たちのこと・・・ネズミ以下にしか思ってなかったんだ!
アイツは科学者だった・・・実験体を探して・・・おれ達を使った・・・
さっきのあいつらも同じだったんだ・・・」

「・・・!!じゃあ・・・君達は・・・」

「そのせいで5年分も歳を取っちまったんだ・・・別に・・・寿命がどうとか、精神がどうとかは関係ないんだ・・・
ただ・・・おれ達には・・・5年・・・成長なんて物はない・・・」

「・・・お母さんにも・・・お父さんにも・・・あたしたちの成長は見せらんないの・・・だから・・・だから・・・」
「・・・辛くてにげてきた・・・ということか・・・?」
「違う!おれ達をこんなことにした奴を追い詰めて!おれがこの手で・・・そうしなきゃ・・・俺たちだけじゃあ
あいつは飽き足んねえ!!だから・・・挫不都の国に・・・」

「・・・!!挫不都・・・って言った・・・?」
白凰が呟いた。
「・・・挫不都の国にいるっていう・・・裏月ってやつらの中に核鬼もいる!!だから!」
「なら・・・話は早いよ・・・」

「ぼくらだって挫不都の国に行くんだ!それに・・・そんな話・・・ほうって置けないよ!」
「・・・!あんちゃん・・・」
「一緒に行かない・・・?」
白凰が手をさしだす。
「・・・旅は道連れ、世は情け・・・だろ・・・?」
烈紅龍も賛成の様子。

「・・・うん!!」

「・・・それじゃぁ・・・」
納徒がくるりと白凰を見た。
「いっこうぜ!白兄!」
「しろにい!?」
そして、道を駆け出す。
「ちょ、待ってよー!納徒ー!白お兄ちゃん達も早くー!」
莉穏も追いかける。
「・・・白兄・・・」
「・・・元気だな・・・」
火燕丸もしみじみ。
「ま、あのくらいは元気が一番!」
「・・・じゃ、いこっか!」

そういうわけで、新たな仲間、異国の少年武者、納徒と少女武者、莉穏と言う
新しい仲間を引き連れ、白凰達はまた、挫不都の国への道を歩み始めるのだった!


第十参話:おわり


次回予告!
挫不都の国に向かう白凰達・・・ところで、その挫不都の国では、一体何が起こっている!?
次回はちょっぴり番外風味!

第十四話「驚き挫不都の裏事情」
お楽しみに!