驚きの力！凰翼装！！

「・・・ん？なんだ？」
鞍丸の視線は
薬草に走る白凰に移った｡
「今だっ！」
その一瞬の隙に、妖壊丸は爪で攻撃を仕掛けた！
「クッ･･･！小ざかしい真似を･･･！行け！風刃！！」
風の刃が飛び出した！
「どこを狙って･･･！」
「・・・そこだ･･･」
鞍丸が呟いた瞬間！

シュン！！

刃が曲がり、妖壊丸の真下を通って飛んだ！その先にいたのは・・・！

「うあっ！！」
白凰の足元を掠め、刃が地面に当たる、その衝撃で白凰は転倒する｡
「貴様！」
白凰の方を振り向いた妖壊丸に、鞍丸の扇が！！

・・・ザッ・・・！

「終わりだ！！」
腕を深く切られた妖壊丸は、地面に向かって落下、そのまま激突、気絶した｡

ゆっくりと地面に降下する鞍丸。
「さて・・・」
白凰を見る｡

「少年よ･･･去れ｡」
「・・・！」
近づこうとする鞍丸からとっさに離れる｡
「・・・そうか・・・警戒を解かんか･･･ならば」

ビッ！
「・・・え・・・？」
立ち上がった白凰の脚をかすめ、血が流れた｡
痛みに思わず、脚をとられる白凰｡
「楽に食ってやろうかと思ったが･･･止むを得んな」
鞍丸が冷酷に言った｡
「な・・・！あなたは･･･！」
「クク・・・久しぶりの武者の肉だな･･･」
白凰に歩み寄りながら、鞍丸が続ける｡
「・・・！？」
「・・・ハハハ・・・何が何だかわからないような顔をしているな･･･
この際、教えてやろうか･･･？」
「やっぱり・・・！お前が於雄得山の妖怪･･･！？」
「警戒したのはお前がはじめてだ・・・今までのやつらはみぃんな馬鹿しかおらんかったからなァ･･･」
今まで自分が殺したであろう者達の顔を思い浮かべる鞍丸｡
その眼は凶器じみ、白凰の背筋は凍りついたようだった｡

「・・・さぁて・・・何処から食ってやろうか･･･頭か･･･足か･･･だが」
白凰を殴り飛ばす｡
「ビッ！」
懐から翼丸が飛び出す｡
「・・・いちいちわめかれちゃぁ五月蝿くてかなわん・・・ん？」
翼丸を見つけた鞍丸は、翼丸に視線を移し、こう言った｡
「そこの鳥･･･ククク・・・ハハハハハ！！そうか！生き延びたか！？」
白凰には何のことを言っているのか分からなかった｡
「貴様が主･･･か？冥土の土産に教えてやろう･･･」
白凰の方に向き直り、言い放った｡
「その傷はなァ･･･俺様が付けてやったものだよ･･･！」
「・・・！！！！」
鞍丸の言葉に驚きを隠せなかった白凰｡
「暇つぶしさ、だが・・・鳥の癖に生意気に逃げやがった、今度こそ終わらせてやるよ･･･！」
足を上げた｡
「・・・や・・・め・・・ろ・・・！」
白凰の訴えも虚しく･･･鞍丸は残酷にも・・・足を振り下ろした｡

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「主と共に逝くが良い・・・！せいぜい悲しむんだな･･･！」
白凰の頭はもうほとんど真っ白になっていた｡
そこへ、真っ黒なものが溢れ出す･･･
それは･･･怒り･･･憎悪・･･自分でも信じられないほどの不の感情が滝のように流れ出た｡
（コイツガコロシタ・・・！！）
無意識のうちに立ち上がって、唱えた｡
「王努桜輝･･･招来･･･！！！！」
超轟禁を振りかざし、鞍丸に振りかぶる、しかし･･･！
「黙っていろ･･･！」
壮絶な鞍丸の力に、簡単に吹き飛ばされた｡
木の根に激突し、跳ね返る｡
立ち上がろうと、無理矢理手をつく｡
ふと、真下に翼丸の無残な姿があった･･･

「・・・なん・・・で・・・？翼丸･･･」
そう呟く白凰の眼からは、涙がぽつぽつと滴っていた｡
「・・・や・・・だ・・・よ･･･」
ふと、涙が一滴、翼丸の羽毛に落ちた、その時・･･
真っ黒になった頭の中だったが、その時は純粋にただ悲しみの感情が支配した･･･
その時奇跡が起こる･･･！！
「・・・え・・・！？」
額の王努桜輝結晶がまばゆい光を発し始めたのだ！
白凰は暖かな光に包まれるように感じた｡
真っ黒な感情が、一気に浄化されてゆく･･･

光の中で、白凰は浮いているような感じがした｡
暖かい･･･
「・・・くん・・・」
誰かの声が響く･･･
「･･･誰･･･！？」
「ぼくだよ・・・はっくん・・・」
「え・・・？ま、まさか・・・」
目の前に、金(黄)色の羽を持った小鳥が現れる・・・
「・・・翼・・・丸・・・！？」
白凰は信じられない様子、だがしかし、確かに目の前で、翼丸が自分に語りかけている･･･！
「どうやらギリギリではっくんの風突備装備の能力が目覚めたみたい･･･」
「え・・・能力？」
「知らなかったの･･･？風突備装備には一個一個に特殊能力があるはずなんだけど･･･」
「は、初耳･･･」
「ま、まあいいや・・・」
少し調子が狂った翼丸
「とりあえず！君に僕の力を貸してあげる！」
「ち、力･･･！？」
「僕の翼をかしてあげるよ･･･！この呪文を唱えて･･･！」
白凰の脳裏に呪文が焼きつく！
「・・・凰翼・・・」
そして、口からつむぎだされる新たな力の呪文！！

「王努桜輝進化！！凰翼着装(オウヨクチャクソウ）！！」

あたり一帯に光が飛び散り、天に向かって一つの影が飛び上がった！
「な・・・なんだ！？」
度肝を抜かれ、自分も飛び立つ鞍丸！
「・・・な・・・小僧･･･！！」
そこで待っていたのは･･･！
「やい！鞍丸！よくも僕の友達を･･･！」
「な、なんだぁぁぁ！？」
それは、金色の鎧に身を包んだ白凰だった！！
胸には鳥の顔、肩に爪のような鎧、背中に大きな翼！

「化けて出たか！死に損いの鳥めぇ！」
風刃を飛ばす鞍丸！しかし白凰は軽々と避けた！
「空中戦で鳥に勝てると思うなよ！」
「どぇっ！？」
喋った！？と白凰は驚天！
「驚いてる場合じゃないよ！はっくん！一撃で決めるよ！」
自身のこもったその言葉に突き動かされ、超轟禁を構える｡
「・・・王努桜輝開放！行くぞ！！」
「終わるのはお前だアアアァァァァァ！！！！」
鞍丸が扇を刀に変化させ、突撃！！
「うおりゃああああ！！」
攻撃をかわし、一気に急上昇する白凰達！

「行くぞッ！！王努桜輝奥義ッ！”改”」
そして、斬影丸を振りかざし、急落下！！

「空落一閃斬（クウラクイッセンザン）ンンンン！！！！」

影魔一閃の斬撃エネルギーを一気に相手に叩き込む大技である！！
新たな奥義をまともに食らった鞍丸は、そのまま高速で地面に落ちていった！

・・・ドシャアッ！・・・

「撃ッッッ！砕ッ々！！」

「あ・・・が・・・！！」
勝負はついた・・・
やっと起き上がった妖壊丸はおぼつかない足取りで鞍丸に歩み寄る｡
「・・・クラマル・・・！」
「や、やめ・・・ろ・・・・オレ･・・を殺す・・・気・・・か？」
息絶え絶えに鞍丸｡
「貴様は・・・俺の親父の名を汚し！自分の行為を偽った！」
爪を鞍丸の喉に突きつける｡
「やめろ！やめてくれ！！謝る！！」
「・・・」
妖壊丸は無言で爪を離す｡
「あ・・・」
「貴様を殺したところで､親父が帰ってくるわけじゃない･･･」
「ああ・・・ありがとう・・・」
鞍丸はゆっくり立ち上がる
「あの世で自分の甘さを悔いるが良い！！」
後ろから妖壊丸目掛け風刃を発射する鞍丸！
「・・・」

ガッ・・・

「あ・・・が・・・」
妖壊丸の爪が、一突、鞍丸の胸を貫いた･･･
「・・・だが・・・親父の無念を晴らすため･･･」
返り血を浴びながら、倒れこむ鞍丸をつかむ｡
「次の犠牲が出ないため･･･だ。」
そのまま、少し経ち、鞍丸の体は粉となり、風に吹かれ･･･消えた｡

「危なかったねぇ･･･はっくん・・・」
鎧を外し、やれやれと安堵の息を漏らす、そこへ翼丸が肩に停まった｡
「・・・って喋ってる！？」
「どーやら・・・風突備装備の影響みたいだね･･･」
「・・・あり・・・？そんなの・・・」
白凰が一気に脱力する｡
「ま、ありじゃない！？これからのぼくは凰翼装（オウヨクソウ）翼丸、改めてよろしくね！」
にこっと笑って、翼丸が言った。
「・・・うん！」

「・・・少年･･･」
さっきまでは妖怪の姿だった妖壊丸が、天海丸に戻っていた｡
「・・・あ、だ、大丈夫ですか！？」
白凰が駆け寄る｡
「・・・大丈夫だ、それより･･･」
天海丸は手をさしだし、白凰に聞いた｡

「・・・一体･･･何故･･･鞍丸が敵と思った･･･？」
「え・・・」
「多くの人々は･･･奴の正体を見破れず・・・」
「友達が･･･」
天海丸の言葉を遮り、白凰が言った｡
「友達が教えてくれたんです･･･「天狗に気をつけろ」って・・・
紅牙の言葉をそのまま白凰は返した｡
「・・・そうか・・・」
それから、天海丸は淡々と語り始めた｡
於雄得山の妖怪の真相を･･･

「・・・俺の一族は武者頑駄無でありながら妖怪の血が流れている･･･
俺の親父とお袋は幼なじみでな･･･親父の正体を偶然知って、人々は忌み嫌った･･･しかし、お袋は親父と駆け落ちし・・・ここへ至った･･･
そして俺が生まれた、そこでっ問題が一つ｡
・・・鞍丸･･･さ、そいつはそれまではおとなしくしてたらしいが･･･
悪知恵が利いた｡そいつは自分の悪事を全て･･･俺の親父のせいにしたんだ｡
もちろん、変化したときのだが･･･
ある日､鞍丸は畑を襲った｡
元々正義感の強かった親父はすぐに助けにむかったさ･･･だが、悲劇が起こっちまった･･･
今まで流されていたうわさを利用して･･･鞍丸は村人に・・・親父を･･･」

そこまで語り、天海丸は向き直った｡

「・・・それからだ、俺はそいつを憎み･･･毎日のようにそいつと戦った･･･
だが、今日君のお陰で終止符を打つ事が出来た･･･ありがとう･･･」
そして、天海丸はうつむいて、また言った｡
今度は少し熱っぽく･･･
「・・・ありがとう・・・」

「なあ、少年、名を聞かせてくれるか？」
天海丸はそう言って、白凰を見据えた｡
「・・・白凰・・・白凰頑駄無･･･です！」
「・・・そうか・・・いい名だ」
「と、ところで・・・」
白凰が申し訳無さそうに言った｡
「ん？どうした？」
「その・・・どうやって帰ればいいんですかぁ･･･？」
「・・・君は今、どの街道を進んでいる？」
「え、練郷街道・・・ですけど・・・」
「それならここを進むといい｡練郷街道につながるぞ｡」
「あ、でも、仲間が･･･」
白凰はまた言った｡
「そういえば、さっき飛び上がったとき、誰かが崖を飛んだのが見えたぞ？
白凰の仲間じゃないのか？」
白凰の顔はその言葉に、ぱぁーっと明るくなった｡
「ありがとうございます！」
白凰は駆け出す｡
「気をつけろよー！それじゃあな・・・白凰！」
天海丸の声援と共に、崖のほうへ駆ける白凰だった｡

少し森を進んだ時・・・
「お、お、お、お待ちくださいッ！」
誰だか女性の声｡
「は、はい・・・？」
「あ、あのあのあのっ！」
もじもじしながら現れたのは、楽妃、
一応再解説すると、白凰に偶然助けられ、一目惚れしたお姫様だ｡
「あれ・・・？君、アノときの女の子･･･」
「は、はい！そそそ、その節はどうも･･･あ、あのあ、あなたは白凰様ですわよね？」
真っ赤になりながらも必死に聞く楽妃｡
「は、はい･･･そうですけど・・・」
「わ、わたくし・・・楽妃と申します！じ、実は･･･その、あの・・・」
やはり、恥ずかしい様子｡
そりゃそうだ、一目惚れした相手に「結婚して下さい」などいえるはずが無い｡
「わ、わわわわわわたくしのおおおおおむ・・・お婿・・・」
「え・・・？な、なに？」
「おお、お婿様･･･」
ボルテージが頂点に達し、目が回り始めてきた｡
このまま行ったら、爆発するんじゃなかろうか｡
「わたくしの・・・お・・・」
「そこにおられましたか！」
じぃが現れた。
「やや！ど、どうなされましたか,姫！？ちょ、失礼！」
白凰にあいさつし、そのまま楽妃の肩を抱き、山を降りていった｡
「な、なんだったの・・・？（・・・って姫って･･･き、聞き違い・・・だよね？）」
一人呆然と立ち尽くす白凰｡
そこへ・・・

「・・・−い・・・」
「はくおおおお・・・・・」
「ん！？」
「烈紅龍！？火燕丸！？」
烈紅龍たちが走ってきた｡
「白凰！無事だったのか！！」
といったのは烈紅龍｡
「・・・よかった・・・」
火燕丸が今にも倒れそうながら言った｡

「な・・・どうしたの、火燕・・・」
「きいてくれ！烈紅龍の奴、お前が落ちた後･･･」
白凰が聞く前に、彼は愚痴りだした｡
「炎術（パイロキネシス）の炎で飛ぶとか何とか言って･･･飛び降りさせられたんだ！
アレは結構気力がいるんだぞ･･･下に草が無かったのが幸いだったが･･･」
そこまで一気に言ったところで、一息ついた｡

「た・・・たいへんだったねぇ・・・」
翼丸が喋った｡
「・・・鳥が喋っ・・・！？」
「あ、風突備装備の影響でパワーアップしたんだ｡」
ぶったまげる烈紅龍を遮って、白凰がすかさず説明した｡

「・・・さ・・・て・・・と！それじゃ、行きますか！」
烈紅龍が威勢良く言った｡
「うん！あっちの方へ行けば出られるらしいよ！」
「そうか、・・・誰に教わったんだ？」
火燕丸がふと聞いた｡
「・・・ま、秘密ってことでね！」
「なにが『ね！』だよ・・・」
呆れる烈紅龍。

新たなたびの仲間を加え、また歩き始めた白凰達！
次に彼らを待ち受けるのは一体！？

第十弐話：終わり

次回予告！
白凰達が次に寄った町、或手魅州（あるてみす）の町で、三人は偶然にも
二人の子供と出会う｡
しかし！そこに現れた裏月の武者！裏月に狙われる子供たちの正体は一体！？

次回！「驚け！おこちゃま武者！？」
お楽しみに！

オマケノヒトリゴト
・・・少年誌によくある打ち切りっぽい雰囲気ですな･･･
あ、でもまだまだ続きますよ｡