人気のない、夜の博物館。
そこでユウナに襲いかかってきたのは、破壊されたはずのガンドロイドたち・・・
そして、そのユウナを助けたのは、あの、レイドだった。

「・・・!!」
周囲のウォーリーを一掃し、レイドは立ち止まる。
「まったくー・・・君らってなんでこう、警戒心が薄いというか・・・」
「あ・・・あんたまで・・・!?」
忘れはしない。
レイドは一度、ユウナを殺そうとした。

「・・・そっか。
 そういえば、前に・・・」

レイドはつかつか、とユウナに歩み寄る。

「・・・」

「ごめんなさいっ!!」

Stage8:IllusionMusiam -continuation- 〜アイドルと操り糸〜

「・・・え?」
レイドの行動は予想外そのものだった。
頭を下げて、謝罪の言葉。

「君には本当に・・・ひどいことしたから!
 僕のこと、敵だって思うのも無理はないよね・・・でも・・・
 信じてくれ!もう僕は味方だ!!」

少し信じがたいかと思ったが、そういえば電車で、誰かに助けられた。
そしてさっき助けてくれたのも彼だ。聴いた声も同じだ。

「どういう・・・こと?」

「あの時、僕はあるヤツに操られてた。覚えてる?僕の額。」

SOADの首領としてのレイドの額には、確かに何か機械がついていた。
だが、今はそれがない。

「僕はそいつにあの機械をつけられて、意のままに操られてた。
 でもトリンガーに負けて・・・その時一緒に機械も壊れた。
 ・・・気付いた時にはあの要塞は壊れてて、砂漠のまんなかにいたんだ。」

「誰かに助けられたんだ。だれかは分からないけど・・・
 僕は君たちの動向を聴いた。それですぐに追いかけたんだ。」

「・・・誰・・・なの?あなたを操ってたっていうのは・・・」
ユウナの問いに、レイドはしばし沈黙する。

・・・そこで見てる、君だよ・・・
暗闇を向いて、レイドはつぶやく。
「そう、お前だ。
 ・・・マンティスタ・・・!!」

「な、な、なによこれー!!」
トリンガーとストークは・・・恐竜の模型に追いかけられている!!
「くそっ!!映画じゃあるまいし・・・!!あぶねっ!!」

「っわ・・・きゃー!?」
ストークが翼竜に捕まる。
「ストーク!!」

ガガガガガガガガガ!!

ガトリングの銃弾が翼竜の翼を破る。
「大丈夫か!?」

そう言った矢先、後ろからさっきの恐竜・・・ティラノサウルスが追いかけてきた。

レイドのにらんだ方向からガンドロイドの足音がした。
そこにいたのは確かにあの、トリンガーに瞬殺されたはずのガンドロイドだった。

「お久しぶりです。・・・レイド様。」
「前置きはいいよ、正体はわかってるんだ。」
少しむっとしたような表情で、マンティスタはうつむいた。
「そうですか・・・知ってしまったのですね。真実を。
 しかし、一つ。知らない情報がある。」

そうつぶやき、マンティスタは一瞬、姿勢を整える。
そして次の瞬間、けたたましい機械音とともに、人型へと変形した。

「私の名は・・・ネクロマンティス。死者を統べる死神・・・」


名乗り終わるが先か、レイドはネクロマンティスに飛びかかっていた。
高速の斬激を手にした鎌で防ぐ。

「お前が誰かなんて知らないけどさ・・・!
 あの時のお返し、たっぷりさせて貰う!!」 

剣と鎌の壮絶な高速戦のさなか、ユウナの耳にはもうひとつ、
何か大きな音が近づいてくるように聞こえた。

そして次の瞬間!!

どっごおおおん!!




・・・壁がぶち抜かれ、恐竜の頭が突っ込んできた。

「お!?ユウナ!?
 何してるんだ?」
恐竜の頭から飛び降りてきたのはトリンガーだ。
トリンガーは着地してすぐ、レイドの姿を見つけた。

「レイド・・・!?あの野郎・・・どういうことだ!?」
「違うの!!レイドは味方!!」
「は!?じゃ、あの緑のほうは・・・」

ザンッ!!
「ぐ・・・ぁ・・・」
レイドの体が地に伏せる。

「お久しぶりです。トリンガー。」
「その声・・・どこかで・・・」

「この姿を見せるのは初めて・・・ですね?」
「あの時のカマキリか!?」

ネクロマンティスはトリンガーに会釈をすると、つぶやいた。
「ええ。あの時はどうも。
 これからきっちりと、お返しいたしますよ。」
「・・・つーか、どういうことだ?なんでこんなことになってんだよ。」
渋い顔でつぶやくトリンガーの顔を見て、ネクロマンティスはため息をつく。
「まだ気付きませんか。
 ・・・彼女の正体に。」
「・・・彼女・・・?・・・陽狐のことか?」

「まぁ、今貴方に真実を伝えても、どうせ意味がないことです。
 平凡な台詞ですが・・・貴方の旅はここで終わりですから。」

一瞬のうちにトリンガーの目前に飛びこみ、鎌を振りかざす。
間一髪でよけられた一振り目。
トリンガーもそれに応じてガトリングを乱射!

「こんなものですか?」
パラ・・・パラとネクロマンティスの手から弾丸が落ちる。
「冗談だろ、おい・・・」
苦々しい口調でつぶやくトリンガーの体に、
高速の鎌が迫る!!

ガキィィッ!


「やらせない・・・今までのお返しだからね!」
体制を立て直したレイドが決死の反撃に出る。
ガギギギギギッ!!すさまじい金属音に合わせてぶつかりあう
緑と水色の影!
かわせますか?とばかりに、ネクロマンティスの鎌がうねる。
「ぐ・・・っあ・・・!!!」
レイドの胸のレリーフを切り裂く、その瞬間
銃弾が鎌の軌道をそらす!!

ドドドドドドドド!!

「ふぅ・・・横槍とは。無粋なことをしますね。」
「悪いな、そいつに聞きたいことがあるんだ。
 邪魔はお前なんだよ!!」

ネクロマンティスは少しの間はうつむき、そして口を開く。
「・・・興ざめ・・・ですね。」
「・・・あ?」

「興ざめ、といったんです。どのみち私は彼にもう、用は無い。
 他に仕事もありますからね。」

「待・・・て・・・!
 逃げる・・・のか・・・!?」

「逃げる・・・ねぇ。
 強がりもほどほどにしておくことです。」
ネクロマンティスの嘲笑とともに、ドォオオン!という地響き。

「こりゃ・・・ヤベーことになったな。」
崩れる天井からユウナを守りながら、トリンガーはつぶやく。
「仕方ねぇ!!転送で逃げるぞ!!」
「て、転送!?」
銃魔王の胸に内蔵された転送機は、ガジェットを
呼び出すだけの物ではない。
簡易的ながら自分自身を移動させることも可能である。

だが。
「平面!平面どこだ!?」
絶対条件として、転送先の座標、転送フィールドを形成するための一定以上の
大きさの平面が求められるのだ。

「・・・!
 レイド!!柱を全部ぶっ壊せッ!!」
一瞬戸惑うレイドだったが、すぐにその真意を理解し
周囲の柱を破壊する。
「な、なにしてんのよっ!?
 そんなことしたら天井が落ち・・・!!」

ズズズ・・・・・・!!

崩れる落ちる天井に向けて、トリンガーの胸から光が放たれる!!
「ひ・・・」

「ひいやぁあああああああああああ!!!!」