前回砂漠を突っ切り、とにかく爆走したユウナたち(主にトリンガー)
彼らの目に現れたのは、墜落した巨大な人工衛星・・・!!
「・・・これ・・・が・・・」
「SOADの本拠地ってワケか・・・!」
わくわくしながら、トリンガーは意気込んだ。
ここがSOADの本拠地。『エクスカリバー』。
一方こちらはエクスカリバーの最上階。
かなりの高所のため、見晴らしは良好。日差しが強かった。
下の階からは警報がけたたましく聞こえてきたが、この部屋の主はお構いなしだった。
「レイド様!」
あわただしく、部屋に一体のロボットが飛び込んでくる。
蟷螂のような姿をした昆虫型ガンドロイドだ。
「この騒ぎはなんだい?朝からうるさいなぁ・・・」
発せられた声は幼く、ある種可愛らしい位だ。
「侵入者です!!・・・散々このあたりを荒らしまわっていた奴らが!」
マンティスタは叫んだ。おそらくトリンガーのことだろう。
「・・・ふーん・・・じゃあ、さ・・・ほら。エレクトラグにでも」
「行方不明です!」
即答。部下の一人は逃げたらしい。
「うわーっはははははは!!!どっけどけー!!」
一方のトリンガーはノリノリでガトリングを乱射していた。
周囲の壁はボロボロになり、警備ロボの残骸が飛び散っている。
・・・いろんな意味で凄い絵だった。
「ちょ・・・!まってよーーーーー!!!!」
追いつかないユウナは悲痛な叫び声。
「しかたねーな!ザラマリオン!」
「ぬお!?」
突然呼び出されたザラマリオンは、そのまま地面に突撃!
「ユウナ乗せてってくれ!」
「お願いザラちゃん!」
「ザラちゃん!?」
そんなドタバタをしているうちに、広間に出た。
・・・なぜか知らないが、すでに誰かが戦った形跡が残っている。
「・・・?先客・・・か?」
「・・・ただし。数千年前のものですが。」
「!」
部屋にマンティスタが現れる。
「失礼ながら。貴方の首、頂戴いたします・・・。」
数分後のことだった。
エクスカリバー最上階の展望室。
さきほどの声の主『レイド』が扉の方を向く。
バターン!
先例に倣い、勢いよくドアが開けられる。
「・・・きてくれたんだね・・・♪」
そこから出てきたのは、トリンガーの首を持ったマンティスタではなく、トリンガーそのものだった。
その顔は驚きに満ちている。
「ふふ・・・驚いてるね」
雲で日差しがさえぎられ、逆光が消える。
展望室はまるで子供部屋だった。
棚に置かれた玩具、本。
「それはさ、ボクが子供だからなのかな?・・・それとも・・・」
レイドは、水色のボディをした・・・
「ボクが・・・キミと同じ銃魔王だから?」
スゥ・・・
喉元に少しだけ、刃が当たる。
「そうだ!この子を使って遊んでみようか?
本物の人間ってまだ壊したこと・・・」
「離せ。」
トリンガーの形相に、さすがのレイドも言葉をとめた。
「・・・わかったよ。んじゃ。」
ユウナを片手で部屋の隅に放り投げる。
「い゙っ・・・!」
「そこで見物してなよ。トリンガーがばらばらにされるとこ。見たこと無いでしょ?」」
「調子に乗りやがって!」
ガトリングを構えるトリンガーだが、その先にレイドはいなかった。
スパァン!!
「・・・フフ・・・フハ・・・ハハ・・・あははははははははは!!!!!」
突然、大声で笑い出すレイド。
「ふふ・・・あははは・・・絶対にやっつけてやるよ・・・絶対・・・壊して・・・
コワシテヤルヨォ・・・コワス・・・ゥ・・・コワス・・・コワス・・・コワスコワスコワスコワス
ブッコワシテヤルヨォ!!」
「・・・ッ!」
おぞましいほどの邪気、そして殺気。ユウナは背筋を突き刺されるかのような感覚に陥った。
「やっと本気になりやがったか。・・・そうでもねぇと楽しめねーや!」
「ダマレッ!!」
怒りのこもった斬撃がトリンガーを襲う!
「ぐ・・・は・・・!」
かなりのスピードで壁に叩きつけられ意識が飛びそうになる。
立ち上がろうにも身体が動かない。
「思イ知ッタァ?」
レイドが歩み寄る。
「・・・・・・」
「キミガドウアガコウガ・・・
無駄ナンダヨ・・・?」
「無駄・・・だと・・・?」
「証明シテヤルヨォ・・・
ソコノメスデネェ・・・」
レイドの狂気の矛先はユウナに向けられていた。
「・・・あ・・・あ・・・!!」
声を出すのがやっとだ。
おそらくいままでで一番の恐怖だろう。
「・・・お前に・・・何がわかる・・・?」
「お前に・・・
ユウナの何がわかるってんだぁぁアアアアアアア!!」
莫大なエネルギーが瞬間、トリンガーから放たれた!!
何が起こっているのか自分でも理解できなかったが、先に身体が動いていた。
「おしえてやるぜ・・・!!
オレの・・・嫌いなモン3つをなァ!!」
そう遠くは離れていなかったレイドに向かって、全力で飛びかかる!
『馬鹿じゃないのか?』レイドは思った。接近すればむしろ勝ち目は無くなる。わかりきったことだ。
最初の衝撃波はトリンガーの肩を直撃した。
いや。・・・トリンガーの装甲には傷一つ無い。弾かれている!
「・・・一つ!やる前から無駄だっつー奴!!」
がむしゃらに衝撃波を乱射する!!・・・トリンガーは止まらなかった!!
「二つ・・・!約束を守らない奴・・・!!」お構い無しにトリンガーは進む!!
もう直前だ。刀を振り上げ・・・叩き斬る!!
ガギンッ!!
刀を片手で止める!!
トリンガーの気迫に完全に押され、レイドには成す術が無かった・・・
・・・そして!!
「みっつめぇ・・・!!」
そこに飛んできたのは・・・!!
ゴシャァァッ!
「す・・・素手ェ!?」
唖然とするユウナ。技のチョイスに異議あり。
「・・・が・・・っは・・・」
トリンガー懇親の一撃に、レイドの頭部装甲の一部に亀裂が入る。
「オレの目の前に・・・立ちふさがる奴だよ・・・!!」
ど・・・しゃ・・・
レイドは・・・
地面に大の字になり、ピクリとも動かなくなった。
眼に値するレンズには、細かい文字が走っている。外部からの強いショックによる一時機能停止・・・という事だろう。
トリンガーを取り囲むエネルギーは消え、もとの赤い体が見えた。
「待たせたな・・・!ユウナ!」
振り返ったトリンガーには笑顔が咲いていた。
「・・・怖かったんだからぁ・・・!!」
急に力が抜け、トリンガーに支えられる。
さあ、町に帰ろう・・・
ドゴオオオオオオオオンン!!!
突然の爆発音に心臓が飛び出すかと思った。いや、確実に喉まで来た。
「な・・・なに!?」
ザラマリオンが叫ぶ。
「おい・・・!この塔・・・このままでは崩壊するぞ!」
極限状態再び、である。
トリンガーはこんな爆発ではびくともしない。しかしユウナは・・・
生身の人間である彼女は崩壊に耐えられるはずが無い。
「しかたねーな・・・」
塔を走って降りる余裕は無い。
かといって崩壊の中、ユウナを守り続けるのもかなり困難だ。
そんな時の行動は・・・
「hニウェc@fy8kガギュ2fby2ゾflm23〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
ユウナはトリンガーの腕に抱かれ、あまりにも声にならなすぎて文字化けするほどの悲鳴を上げながら
エクスカリバー横を落下していった・・・
(やっぱ・・・コイツに取り憑いたのは・・・間・・・違・・・)
エクスカリバー最上階。炎の中、レイドの額の機械が自壊する。
そして、その様子を見守るものが、一人。
「・・・・・・・・・・・・・」
もう一方、今度は、そう。・・・テレビ局の控え室だ。
テレビにニュースが映っている。
「・・・ん・・・?」
そこに映し出されたものは、エクスカリバー崩壊のニュース。
「・・・かわいそーに・・・"アイツ"に近寄られたのが運のつき・・・だったのかな・・・」
そういって、テレビを見ていた女性は、スイッチを切った。
SOADの崩壊は瞬く間に国中に広がることとなる。
そして、ここ。シリンダータウンでも・・・
ちなみに。シリンダータウンとは実は俗称である。本当の名は・・・まだここでは明かさずにおこう。
「・・・」
ユウナは墓地に来ていた。少し荒れてはいるが、立派な日本式の墓地だ。
「・・・玖瀧(くだき)家ノ墓・・・?もしかしてじいさんのか?」
二人の目の前にあるのは『ユウナ』こと玖瀧優菜の祖父。玖瀧絨貴(じゅうき)の墓石だ。
「・・・ありがとう。トリンガー。」
トリンガーのほうを向く。
「あなたのおかげでここに・・・平和が戻ったんだ・・・」
そして、ゆっくり眼を閉じた。
「・・・なーに臭いこと言ってんだ。」
ぽん、とユウナの頭に手を置く。
「・・・にしてもよー・・・。ガンマオーってみんなあんくらい強いのか?」
今までに戦った銃魔王・・・いずれも苦戦を強いられた。
決してトリンガーが弱いわけではない以上、二人とも強い。といって間違いない実力だ。
「だろうね・・・たぶん。」
「・・・んじゃ、よ。もしオレが全員倒したら・・・オレが最強だよな?」
「・・・?」
突拍子も無い質問に、言葉を失うユウナ。
「決めたぜ!全部のガンマオーをぶっ倒してオレが最強のガンマオーってコトを確かめてやる!!」
「そうと決めたら即行動だぜ!・・・とりあえず情報収集に都市にでも行ってみるか!!」
そう言い放ち、適当な方向を指差すトリンガー。
「・・・ねえ!あたしも一緒に行っていい!?」
「・・・!」
「どっちみち・・・道とかわかんないでしょ?」
「・・・それも・・・そうだな!」
「・・・これから始まる・・・!オレの旅と伝説がな!!」
夕日に向かってそう誓ったトリンガーのボディーは山吹色に照らされ、美しかった。
目的地は、近隣の大都市、通称『フルメタルポリス』!!
「あ・・・ちなみに町はそっちじゃなくてあっちね」
Stage3&
Aria1(第一章)終わり・・・