たちが訪れたこの小さなショッピングモールは二つエリアに分かれている。
100円ショップのある東側と、道路を挟んだ南側。
その南側の奥、他よりも二回りほど大きな店舗の自動ドアの奥には本屋があった。

「ホンヤ・・・ですか?」

今日何度目かはわからないが、またもやがキョトン顔をしている。
まあ、確かに狐に本を理解しろというのもだいぶ無理があるのだが
今日の実績を見る限りでは、期待してよさそうだろう。

「そういえばは文字は読めるのか?」


少なくとも、は日本語を理解して会話している。
が、今日までに彼女が文字を読んだことはない・・・ように思う。

「もじ・・・・・・・・・?」


適当に近場にある本のタイトル文字を指さす。

「この、にょろにょろした黒い絵のことですか?」

やっぱりか。

どうやら彼女は文字を言葉として認識していなかったらしい。
というか、文字を知らずに三日間過ごせるのは現代の文化が凄いのか
それともの適応力が凄いのか。

「えーと・・・たぶんこの辺のコーナーに・・・」

と、を連れてきたのは児童書、いわゆる絵本のコーナーだ。
は他とは違った雰囲気の書物を見まわしている。

さらに売り場を探すと、目当てのものが見つかる。

「これは?」

「人間の子供に言葉を教えるための本だよ。
   しかも、実際にしゃべるらしい」



職場の先輩の子供自慢がこんなところで活かされるとはな・・・

「人間の社会で生活するなら、文字は読めなきゃな。
   たぶんならすぐ読めるようになるんじゃないかな。」

「が、がんばりますっ」

「何か絵本を買っやるよ。
   一人で読めるようになったら一人前だな」


「はい!」

元気よく返事をして、並んだ絵本を見て回るの目は輝きまくっている。

そしては、が手に取った「ごんぎつね」をさりげなく却下したのだった。



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